セクスティニエ 2




「何そわそわしてるの」
「…いや、その」

臨也のマンションへ足を踏み入れるのは初めてではない。
だが、普通に二人で玄関から入り、普通に案内され、普通に飲み物を出されたのは無論これが初めてだった。
付き合う、となってからもう二週間程だが、初めての“お宅訪問”に妙に居心地悪そうに辺りを見回す。
目の前に紅茶が入ったカップを置かれ、良い香りが鼻を擽った…のだが。

(家、帰りてぇ…)

静雄の頭の中はもう一人で事を始めている。
目の前に恋人がいるというのに、自慰がしたくてたまらないのだ。


「何、トイレでも行きたいの?また淹れ直すし、行って来ていいよ」

「ちがっ」


違う、と答えかけて静雄の脳裏にとある案が浮かんだ。


「あ、あぁ、そう、トイレ行きてぇ」

「うん、行っておいで」


妙にやさしい臨也を気にも留めることができずに、早々に立った。


「知ってると思うけど、一番奥の右ねー」


広い廊下をズカズカと大股で歩いた。
後ろから聞こえていた声が小さくなる。 無駄に長い廊下だった。
こんなとき、ああ、こいつ金持ちで良かったとか下らないことが脳裏を過ぎった。


バタンッ!  


「…はぁ、はぁ…っ」

(なんだってんだ、俺…臨也の家に上がっただけで…)


下半身に手を添えると、それはズボン越しに大きく形を帯びて脈だっていた。


「…俺って…。ああ、くそッ」


さっさと済ませて戻らないと。 そう思い、ジッパーを勢い良く下げた。
質量を持った静雄のそれはかなり大きい。
もしかしたらいつもより反応しているかもしれなかった。

そっと手に取ると、熱が篭ったただの肉塊だった。
静雄は目を瞑り、便座に向かい合わせになってドアへ体をもたれさせた。
擦る音が狭い個室で木霊して、いやらしい気分が増殖される。
耳まで感じる、いつもの自慰とはまた違う背徳感があった。


「…ッ、ぁ」

(臨也の家で、俺、俺・・・)

ぶるり、と背筋がしなった。


「シズちゃん?」
「!」


すると、ドア一枚隔てた向こうから背中越しに求めていた声がした。
静雄の下肢は更に反応する。

ドクドクドク


「んっ」

『ねー、いつまで入ってるの。待ちぼうけなんだけど』

「は、腹いてぇんだよ!あっち行ってろって」


懸命に叫ぶと、気配はするものの返事がなくなった。


(行った…か?)





「ねぇ、今どんなカンジ?」

「ッ!」


すぐ後ろで、耳元で囁かれているかのような甘い声。


「あ…ッ?」

ドクン


静雄のソレが更に脈立った。


「そのままさ、ゆっくり指で擦り上げてみて…」

しゅっ…じゅく


指が、手が、声が、止まらない。


「ふっ、くっぅ」

「そう、上手だねぇ」


言われるままに手を動かした。


「あ」

「シズちゃんって大きいのかな?でも身体は細いし…でも背が高いからなぁ」

「んっ、く」

「…静雄」

ドク!

「…ぁっあ」


名前を呼ばれて、一瞬で達してしまった。
直ぐ背後から、優しい声音で、強かに命令される。

「ココ、開けようね?」




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