アンダーザローズ3
〜秘



・・ ・・・・・ ・・ ・



意識を取り戻したときには、
場所がガラリと入れ替わっていた。

…身体の調子も元通りに変わっていれば良かったのに。




「…ッ」
「おや、気が付いた」

ぎしりと軋む首を懸命に起こす静雄。
見渡すと、清潔感のあるマンションの一室のようだった。
それが否が応でも臨也の家だと気付く。


「今日さ、久しぶりにセルティにお仕事頼んだよ。いくらなんでも俺はシズちゃんみたいな大きな人間は運べないからねぇ。
…あ!違うか、化け物だったねハハ!」

高い天井に向かってけたたましく笑う。

「三人乗りとか!楽しかったなー」

椅子に座っていた臨也がくるっと一回転してから立ち上がる。


「こうさ、真ん中にシズちゃん挟んで、…ああ、大丈夫大丈夫!前はちゃんと俺のコートで隠したから。」
「てめぇ…」
「セルティも良い子だ。なんにも理由を聞かずに顔を真っ赤にして帰って行ったよ」

くす、と皮肉さを込めて笑む臨也は、顔のないセルティをどうしてそう捉えたのか、静雄をからかう為の偽作かは計り知れない。

「さて、お喋りはこの辺にして」
「…ッ、おい、俺が気を失ってる時にまた何か仕込みやがったな…」

静雄は異変に気が付いていた。
さっきよりも身体が他人のようだったからだ。
脈が耳元で聞こえるように、高鳴りも進化している。

「だって、シズちゃん薬切れるの早いじゃない」
「…覚えてろよ…ッ」

ドスの聞いた声も、今の臨也には面白おかしく写る。
ベッドに大の字に横たわせた、全裸の静雄に言われても説得力がないからだ。



「キスだけでイッたくせに…」
「!そ、それは…テメェが変なもの入れっから…!」
「ふぅん?」

顔を真っ赤にしていきなり叫ぶ静雄が可愛くて、肩を揺らして笑いを堪えた。

「寝ている間、どうして殺さなかったんだと思う?」
「…あ?」
「ずーーーーっと、触ってたから、さ」
「!!」
「ほぅら、寝ながらイってたの、見て」

つ、とへそ辺りに指を滑らせる。
首が完全に起き上がらないのを見て臨也は静雄の後頭部に手を回し、律儀に前へと起こしてやった。

びくっと震えつつも、濡れた下半身が微かに見えた。

「…!!!」
「シズちゃんの、おっきすぎて顎が外れるかと思ったよ」
「なっ」

―そんなものは、覚えていない。

臨也に何をされたのかを考えるだけで気分が悪くなるはずなのに、
覚えていないことに対して違和感を覚えた自分に嫌悪を抱いた。


「…なーに?もっかいしてほしいの?」

にや、と含みを持った笑いで指先を舐める。
馬鹿にされていると判っていても、今の現状をどう切り抜けるかを先決にしなければならないのに、
静雄の身体はそれを拒んでいた。



 も っ と シ タ イ ?



ドクドクと波打つこめかみが五月蝿い。
自分が自分でなくなる瞬間だ。
いつも力任せに暴力を奮っている時とはまた違う瞬間。


やめろ


「はぁ…はぁ…」
「我慢しすぎると返って毒だよ。大丈夫、意地悪なんかしないよ」

臨也はさっきからずっと指を舐めている。

「言ったでしょ、俺は、シズちゃんのことが…」


―そんなことは、覚えていない。


最後まで言わない臨也に苛立っている余裕もなかった。
動悸が激しくなり、視界が霞んでくる。
目の前にいる男をグシャグシャにできれば、スッキリできるかもしれない。
グシャグシャに、犯してやる。


「臨也、犯らせろ…そして殺してやる」
「わお!シズちゃんからそんな事言ってくれるなんて。薬ってすごーい、ね」

ぺろっ、と濡れそぼった指を出して近づいてきた。
足を持たれたと思ったら次は妙な場所へと指を当てられた。

「!!」
「あ、柔らかーい」
「ちょ、何、して」
「じゃ、お返しするね。
   "シズちゃん、犯らせて" ?」

「!何の、冗談」
「冗談?じゃあさっきシズちゃんが俺に言ったのも冗談だったの?」
「ちが…!俺がテメェを」
「何寝ぼけたこといってるワケ」


ぐぷ


「!!!!!!」
「シズちゃん、どうせ前立腺の場所なんて知らないでしょ?」


ぐぷ、ぷ


「うぁ…!」

臨也の細い指が初めての感覚を静雄の中に持ってくる。
バラバラと動く指が一点を集中したとき、違和感も何も吹っ飛んだ。


「   ・・ … !」
「あ、キターー♪」

跳ねた身体を楽しそうに眺める臨也。

ぐちぐちと暴れる数本の指先が、柔らかい内壁を殺していく。

「シズちゃんって、中は柔らかいんだね…」
「・・・い、臨也、ァ!」

力が入らない。
下半身が別の生き物のように臨也の指を咥えて離さない。

「あーいたいいたい、食いちぎらないでよ」
「くっ、うぅ…」
「なぁに!泣いてるの!?アハハハ!面白すぎるよ!」

生理的な涙が頬を伝う静雄を見下ろしては眉間にシワを寄せて嘲笑う。
臨也が他の人間とは違う神経で物を見ている証拠だ。

「あー、もう、シズちゃん…」

ふふ、と焦点の合わない瞳で天を仰ぎ見、指の動きを止めた。


ヌルッ


「んン!!!」

抜かれるもどかしさに、首を曲げ、ベッドのシーツに顔を伏せた。

ビクッ

そして、同時に果てた。



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