小説 | ナノ
鬱陶しい


「んぁ〜鬱陶しい」

思わず口に出ていたその言葉に、目の前の人物の顔は分かりやすく歪んだ。

「はっちゃ…ん!」

まずい…なんだか面倒くさいことになりそうなパターンだ。しかし早くフォローしないとますます面倒くさいことになりかねない。前例がある。

「兵助…」
「嫌だ嫌だ聞きたくない…っ!!」
「ええええ弁解させろよ」
「はっちゃんの馬鹿ぁぁ!!!」
「な…っ!」

ここで折れるような俺ではない。というか俺が悪いことをした訳ではないし…

「俺も…」
「え?」
「俺も兵助なんか嫌いだ!!この豆腐馬鹿野郎!変態!」
「え…えええやだやだはっちゃんごめんなさいいい!!!」

う…鬱陶しい…

天気に加え、こいつまで…




なんで俺はこいつと仲良くできているんだろう。

まぁ…いっか、楽しいことは楽しいし…


俺は湿気でまとわりついた髪を払いのけながら、そんなことを考えた。

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