小説 | ナノ
RAINY DAY1(くく竹)


くく竹で時かけパロ
現パロです
なんでも許せる方向け










「失礼します」


数奇的な運命というものはあるのだな。
と俺、竹谷八左ヱ門は考えていた。
特にクラスで目立つわけでもない竹谷は、自分に特別なものがあるなんてのは考えていない。けれど、あの時計を拾ってから、竹谷の運命は確実に変化した。


「竹谷か。最近遅刻もせず、偉いじゃないか」
「心を入れ替えたんですよ先生」


遅刻魔と呼ばれてクラスメイトには散々馬鹿にされた竹谷も、今では遅刻ゼロの優等生になった。三郎なんて、本当に竹谷かと最初は信じなかった。酷いものだ、俺は俺なのに。
けれど、あの時計のおかげというのは誰にも言っていない。
言う必要も、ない。











あの日、

雨が、降っていた。
とめどなく空から流れ落ちる雨が、世界を濡らしていた。


ざあざあ


竹谷は雨が好きだった。
別段理由はないけれど、いろんな雨をいつも楽しんでいた。


「いつまでも降り止みそうにないなぁ、この雨は」
「でも八、この雨好きでしょ」
「…ばれた?」


隣の勘右衛門が緑の傘をくるくると回す。今日はバスケ部の練習もないから、一緒に帰っている。
ほどなくして勘右衛門と別れると、八左ヱ門はバシャバシャと水たまりを踏みながら歩いていた。


「お…たまじゃくし!!」


生き物が大好きな竹谷は、子供の頃見た以来になっていた、水たまりのおたまじゃくしにわくわくした。


「こんなとこにいると危ないぞ」


竹谷はおたまじゃくしを掬って、近くのドブに投げた。ドブでおたまじゃくしが生きれるのかは竹谷は知らなかったが、竹谷は道端の水たまりよりは安全だろうと、安心した。

いいことをしたな、と満足げな竹谷は、道端に光るものを見つけた。


「おほー!綺麗な時計だな」


女物らしいそれは、人に見つからないようにひっそりと落ちていた。当然びしょ濡れで秒針は止まったまま。綺麗に装飾されたアンティークなそれに、何故だか竹谷はとても惹かれた。兵助なら直せるだろうか…と、ポケットに忍ばせた。


おたまじゃくしといい、時計といい、今日はついている。
次の交差点を曲がれば八左の家はすぐそこ。鼻歌まじりに曲がれば、


瞬間―、


喧しい音がしたと思った瞬間―


竹谷の体は宙に浮いていた。

宙に舞うのは俺の青い傘と、

ああ、俺か―…



そうして、竹谷は意識を手放した。





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