膝の上

日中、お天道様が空に居る時に黒死牟が外を出歩く事が出来ないと知ったのはいつだっただろうか。彼が人間ではない事は初めから分かっていた事だけれど、まさか日光に当れないとは思いもしなかった。

燦々と降り注ぐ太陽の元で洗濯物を干し終わり、家の中に戻ると黒死牟が目を閉じて正座をしている。シャンと背筋が伸び、美しいその後ろ姿にそろ、と近づき名を呼ぶ。

「こくしぼう、?」

まだ少女の枠を抜けきらない小さな体を彼の前へと寄せ、顔を覗き込む。鼻筋が通った綺麗な鼻、形が整った薄い唇。いつも開いている6つの瞳はしっかりと閉じられていた。彼は自分の事を鬼だと言っていたけれど、睡眠を必要とするのだろうか。未だかつて一度も寝ている所なんて見た事ないのに。

スルリと頬に手を寄せても、彼の瞳が開く事がない。

正座をしている彼の上へとちょんと乗った。ゆっくり体を後ろに倒し、彼にもたれる。浅く呼吸をしている音と彼の心臓の音が聞こえた。きっと気づいているだろうに、止められないのでそれに甘えるように彼に体を預ける。
すると彼の手が私の髪を撫でた。少しびっくりしてしまって驚くように振り返れば、一つの瞳だけが開きこちらを見ている。

「だ、だめだった?」
「…構わぬ。」

その言葉に思わず頬が緩み、その照れた顔を隠すように彼の胸元にぐりぐりと額を押し付けた。


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