猛獣注意

現パロ。R15




砂糖菓を溶かしたように甘ったるい声が酷く鼓膜を揺らしていた。

友人から借りたDVD。凄腕女スパイのアクションコメディ映画。見所のあるアクションシーンもあれば、ちょっと下品でクスリと笑える場面もある面白い作品である。途中までは良かった。恋人である彼の足の間にすっぽりと体を収めて座り、2人仲良く映画を見ながらクスクスと笑っていたのだが、敵の男性と色っぽい雰囲気になり乳繰り合い始めたテレビの中の彼女達は勢い治らず、ベットイン。そこで暗転して次のシーンに移行するかと思いきや、濃厚なキスから始まり粘着質な水っぽい音と興奮したような激しくなっていく息遣いが、ガンガンと頭を揺らした。

どこまで、どこまでいくの。はやく、はやく過ぎて欲しい。

後ろの煉獄さんの顔が見れず、気まずい雰囲気が流れる。面白いから、と借りたものだったので折角だから一緒に見ようとお誘いしたのだけれど、失敗だったかもしれない。下品な要素が少し過激だったのだ。日本なら、ピーと効果音が入ってしまうような明け透けな言葉のオンパレード。それが面白いのかもしれないけど、恋人とみる物じゃなかったかも。

「あっ、あぁあぁ!あんっ、あっ、あっ、」

ギシギシと揺れるベットの音。豊かな金髪を振り乱しながら豊満な胸を揺らし、わざとらしく大袈裟な程高く大きな甘い声で喘いでいる女性が液晶一杯に写し出されている。
背中に変な汗が流れる。早く終わって欲しい、思っている私の気持ちとは裏腹にどんどんと激しくなっていく行為。軽いA Vを見ているようだ。
思わず内腿に力をいれた。あまりの恥ずかしさと居た堪れなさに顔を俯かせる。煉獄さんはどう思っているのだろう。何か言ってくれれば、これちょっと凄いですね、えへ、なんて言ってその場を笑って流したのに、恐ろしい程の沈黙である。どうしたら良いのか。

じっとしているのも苦痛で恐る恐る、盗み見るように顔を上げて煉獄さんの様子を伺ってみれば、赤面していたり不快感で顔を顰めている訳でもなく、無表情でテレビに流れる映像をたんたんと眺めていた。意識していたのは、私だけだったのか。なんとも言えない恥ずかしさが込み上げ、顔が赤くなるのが分かった。
すると、私の視線に気付いたのか顔の角度を変えずに目だけでこちらを見下ろした色素の薄い琥珀色の瞳がゆるりと細められる。
キュ、と口を閉じ真っ赤になった私の顔を見た煉獄さんは唇の端を軽く上げ、少し意地悪そうに笑った。

お腹に腕を回され唐突に抱き寄せられる。ひぁ、と情けない悲鳴を上げて、目に見えてワタワタと慌てているとゴリと何か硬いモノが尻に押しつけられた。

「…ぇ、…」

これは、…。何かを瞬時に察して、かちんこちんに体を強張らせて固まっていると、喉を押し殺すように後ろで笑っている煉獄さんの声が耳元で聞こえた。

「れ、れ、煉獄さ、ん、…!」
「ははっ、すまない。君の反応が可愛くてついな!」

お腹に回っていた筈の手が不埒に動き出し、服の中へと侵入してくる。大きな手の平が胸を覆い、片方の手は無意識に内股になっていた太腿を撫で、防御力が皆無の短パンから指をスルリと入れられ下着の上から割れ目をなぞられた。

「あ、や、だめ、!」

今、そこを触られるのは駄目だ。しかし、触られた所からくちゅり、と水音が響き知られたくなかった事が瞬時でバレた。

「濡れている」 
「分かってるなら、わざわざ、言わないで…下さい」

隠しきれない程に赤くなった顔を隠すように手の平で覆う。あんなのを見て、日頃彼に抱かれている行為を思い出すな、と言う方が無理な話である。
振り向き座間に、唇を奪われ軽く甘噛みされる。

私を見下ろす煉獄さんの瞳には隠しきれない程の欲が滲み出ていた。そのまま、座っていたソファに押し倒される。

「すまないが我慢できない」

そう言いながら恐ろしい程の色気を含んだ艶やかな笑みを浮かべる煉獄さんの瞳は狙いを定めた肉食獣そのものだった。私も期待を滲ませるように太腿を擦り合わせ、キスを強請れば噛み付かれるように唇を奪われる。

もうテレビの声など何一つ聞こえなくなっていた。

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