愛おしい朝の始まり

ひんやりと冷たい空気が鼻先を冷やした。ひたひたと氷のように冷たくなった廊下を歩いていると聞き慣れた声が耳に届く。薄らと明るくなり始めた空を見て、しょぼしょぼと瞼が重い半目の目を擦りながら声の方へと向かった。

戸を開けると、外の空気がするりと滑り込むように家の中へと入り込んで来る。あまりの寒さにぶるりと体を震わせ、眠気が一気に吹き飛んだ。先程まで暖かい布団の中でぬくぬくと温まり寝ていた為、急激な温度の変化に体が驚いたのか、くしゅん、とくしゃみが飛び出る。

「む、沙月、起きたのか!」

おはよう!煉獄さんの声が大きく寝起きの頭がぐわんぐわんと揺れ、若干目を回しながら、おはようございます、と挨拶を返せばニコリと笑った煉獄さんにつられてふにゃりと笑みが溢れた。

鍛錬をしていたのか、片手に木刀をもち何故か上半身が裸の煉獄さんの体からほくほくと湯気が立ち昇っている。寒空の下、逞しくついた筋肉にしっかりと美しく引き締まった体が惜しみなく曝け出されており、思わず見惚れててしまう。いつもと違い、高く結い上げられた金色の髪の毛がゆらゆらと揺れている。
にしても、寒くないのだろうか。

「寒く、ないのですか」
「動いていたら暑くなってな!」

沙月は寒そうだ、と廊下に立っていた私の側まで来た煉獄さんにするりと頬を撫でられる。
冷気ですっかりと冷たくなった両頬に煉獄さんの手で挟まれ、思ったよりも彼の手が暖かく思わず擦り寄った。すると、ふ、と笑った煉獄さんが、猫のようだな、と言った。その言葉につられて私も笑い、煉獄さんの手に自分の手を重ねる。

「煉獄さんは、温かいですね」

ゆるり、と細められた目。楽しそうに上がる口角。空に登り始めた朝日に照らされて輝く琥珀色の瞳。

そして、優しく触れるように重なった唇。

ゆっくりと離れていき、は、とお互い吐き出した息は真っ白だった。

「沙月、顔が真っ赤だな!」

そう言う煉獄さんも耳まで真っ赤で、未だに私の頬に触れている手は熱い。貴方もですよ、と言う言葉を飲み込み、もう一度、今度は私から口付けた。

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