運命の瞬間
「さぁ、この部屋だよ」
応接室に来た私たちを待っていたのは、ミルフィオーレファミリーの幹部たち。少し離れた窓付近には、入江様の姿もあった。
「彼らは気にしなくていいよ。さてと、交渉を始めようか?」
「……交渉をする気なんか、初めからないんだろ?」
そう、白蘭様には初めから交渉をするつもりなんてない。その証拠に、幹部たちの手には各々の愛用の武器が握られており、いつでも綱吉を殺せる状態だった。
「さすが綱吉くん。だけど、君を殺すのは彼らじゃない。彼らは見届け人だよ。君が死ぬところをねッ!」
「じゃあ、お前がオレを殺すのか?」
「僕が殺すのも悪くないんだけど、それじゃ面白くないでしょ? 君を殺すのは――ビアンカちゃんだよ」
「っ!?」
「……え?」
白蘭様、今、なんて仰ったの? 私が、綱吉を殺す……?
まさか、あの時のお楽しみって……!
「僕に殺されるよりも、秘書として君に仕えていた彼女に殺される方が、何倍も面白いからね!」
いつもと同じ声で言っているのにも関わらず、白蘭様の笑顔は歪んでいた。
「さぁ、ビアンカちゃん。彼を殺して」
拳銃を握らせ、私の耳元で悪魔のような囁きをする白蘭様。
一歩一歩、確実に綱吉に近付き、射程範囲内に入った彼の心臓に、銃口を向ける。
覚悟を決めたのか、綱吉は静かに目を閉じた。