愛しかった人
「ビアンカちゃんおかえり!」
「只今戻りました。白蘭様」
昨夜のうちにミルフィオーレファミリーのアジトに帰還した私は、真っ先に入江様へ挨拶に向かった。夜も更けているということで、白蘭様への挨拶は翌日、つまり今日することになった。
朝一番に挨拶へ向かうと、白蘭様は嬉しそうに笑って、私に抱きついてきた。
「ビアンカちゃんが戻って来て嬉しいよ! 本当はもっと先だったんだけど、狩りの最中に巻き込まれたりしたら嫌だからね」
子どものように無邪気に笑う彼は、とてもじゃないがマフィアのボスには見えなかった。
「狩りはいつなさるおつもりですか?」
「うーん。ビアンカちゃんも戻って来たことだし、明日にでも始めようかなー」
「明日、ですか……」
狩りの準備が終わったとはいえ、開始するにはまだ時間があると思っていた私は、白蘭様の前だというのに驚きを隠せなかった。
「どうかした?」
「明日にでも開始なさるのでしたら、私も準備をしなくてはと思いまして」
「あ、ビアンカちゃんは戦力に入れてないよ?」
「……え?」
私が、戦力に入っていない?
「長期のお仕事で、ビアンカちゃんも疲れてるでしょ? だからボンゴレ狩りの最中は思う存分休んでて」
「し、しかし……」
「だいじょーぶ。ちゃんとお楽しみには、参加させてあげるから」
「お楽しみ?」
意味が解らずに首を傾げるが、白蘭様は私の頬を優しく撫でるだけで教えてはくださらなかった。
この後に、どんな悲劇が待ち受けているのかも知らずに――