ファミリーのボスとして、一人の男として



side:沢田綱吉


「さてと、こっちもやるとしますか」

 ビアンカが見えなくなるまで見送ったオレは、スーツの内ポケットから黒くて四角い物体を取り出した。物体の正体は小型爆弾。威力はそこまで強くはないけど、バルコニーを吹き飛ばすには十分な大きさだった。
 爆弾を設置して、十分な距離を取った所でスイッチを押した。
 爆発で部屋の窓ガラスはすべて割れ、バルコニーそのものは崩落した。

「ごほっ……! 小型なのに威力ありすぎだろ……」

 爆風で部屋の入口近くまで吹き飛ばされたオレは、背中の強打をはじめとした掠り傷や打撲などの怪我を負った。

「十代目!」
「おいツナ、無事か!?」

 爆発音を聞きつけた守護者や部下が続々と集まってきた。
 元家庭教師であるリボーンはオレの体をゆっくりと起こすと、小声で話しかけてきた。

「上手くいったのか?」
「なんとか、な」
「そうか」

 小さくニヤリと笑ったリボーンは、オレに肩を貸すと部屋の外に連れ出した。

「十代目! お怪我の方は!?」
「オレは平気だよ……それよりも、ビアンカが……ッ」
「十代目!」
「すぐに医療班に連絡しろ!!」

 守護者たちが的確に指示をし、慌ただしく部下たちが動き回る。

「ツナ、ここってビアンカの部屋だろ? いったい何があったんだ?」
「攫われたんだ、ミルフィオーレの連中に……」
「ミルフィオーレだと!?」

 敵視しているファミリーの名が出て、一気が周りがざわつきだした。

「ミルフィオーレって、あのミルフィオーレファミリーか!?」
「ボンゴレに対する宣戦布告か!?」
「ボスの秘書を攫ったって……」

 ひそひそと話す部下たちは、あきらかに動揺していた。

「急いで、同盟ファミリーに連絡を取ってくれ」
「わ、分かりました!」
「ツナ、これからどうするつもりなんだ?」

 リボーンの質問に、みんなの視線がオレに集まった。

「……相手は、あのミルフィオーレファミリーだ。きっと全面戦争になるだろう」

 息をのむ声が、あちらこちらから聞こえてきた。

「だけど、勝つのはオレたちボンゴレファミリーだ。そしてビアンカも、必ず取り戻す!」

 オレの言葉を聞いて、みんなの顔つきが変わった。不安などは一切感じられず、それどころか、やる気に満ちた表情に変わっていた。

(ごめんね、ビアンカ……)

 もう一度君をこの腕で抱くまで、オレは諦めない。


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