昼食の準備をしていると台所に桜が入って来た

彼について調べている間に着替えたらしく桜も普段着になっていた


「あっ、桜。彼の身辺調査は終わったのですか?」


そのまま昼食の準備をし出す桜に少女が問い掛ける


「まぁ大体な。これ運んでいいかい?」


調理し終え、盛り付け終わった膳を指さして桜が尋ねる


「はい。お願いします」


少女の返事を聞いた桜が膳を居間へと運びだす

少女も膳を持って桜に続く

運んでいる途中で少年の叫び声が聴こえた


「彼が起きたのでしょうか?」

「あー、多分・・・な」


少女がそう言うと桜が苦笑いしながら答え、居間へと入って行く


「あははは、あんま驚かせてやるなよ、はな」


居間には飛び起きたであろう少年と今目覚めたはなが目を擦っていた

桜が手に持った昼食、鍋焼きうどんを座卓に置く


「出来たぞー、鍋焼きうどん」


それを聞いたはなが素早い動きで席に着く


「早っ!」


少年がはなの素早い動きに驚き、声をあげる

席に着いたはなの頭を桜が撫でながらいつものことだ、と少年に言った


「また麺類か」


とそこで居間にこの家のもう一人住民の声がする

橘である

居間に入って来た彼が座卓に並べられた膳を見て、言った言葉は少女が先程予想したものと全く同じだった


「今日ははなが頑張ったみたいですから」


少女が橘にそう説明すると彼は納得したようだ

それ以上は何も言わずに席に着いた

はなを撫でてゆっくり食べるように言いながら

桜も席に着いて少女に座る様に促す

少女も自らの定位置である橘の隣に腰掛ける

揃ったところでいつもと同じように手を合わせる四人


「「いただきます」」


きちんと挨拶をしてから食べ始めた四人を起き上がった少年が呆気に取られた表情で見守っている


「目が覚めたんならこっち来て一緒に喰いな、高本致佳人君」


桜にそう言われた少年、致佳人は素直に返事をして起き上がったが途中である事に疑問をもった


「なんで俺の名前!!?」

「鞄の中身を見たら一目瞭然だろう。携帯電話だけてなく学生証まで入ってたからな」

「ちょっ、見たんですか!?」


驚く致佳人に悪びれる事もなく橘がそう告げる


「おう、携帯電話の内容も全部な」

「プライバシーの侵害ですよ!?」


さらっとヒドイことを言った桜に致佳人が半泣きで訴える


「やっぱりそう思っちゃいますよね」


致佳人の反応を見て少女が同情した様な笑みを浮かべて言った


「ごめんなぁ。ああも簡単に結界に入り込まれちまったからな。別ん所の奴かと。それか刺客」


桜が刺客呼ばわりした事に大きく反応した致佳人が堰を切った様に質問をし始めた

そんな彼の袖を軽く引っ張り、はなが致佳人に話し掛ける


「うどん、伸びる」

「え」


はなの行動に驚いた致佳人

そんな彼をじっと見つめて、はなが再び言った


「早く食べないと伸びる」


はなにじっと見つめられたからか、致佳人は赤面して困惑した


「致佳人くんははなの顔が好きなのでしょうか?」


少女はそう小さく呟くと隣で麺を啜っていた橘がチラリと彼女に視線を投げ掛けたが何も言わなかった

その間に桜にも勧められた致佳人が昼食に手をつけていた


「おいしい・・・」


うどんを一口食べて感動したように呟いた致佳人に少女は嬉しそうに言った


「そういって貰えると作った甲斐があります」

「えっと、貴女が作られたんですか?」


致佳人が斜め前に座る少女に尋ねた


「はい。そうです」


少女がにっこりと致佳人に微笑むと、彼は先程と同じ様に赤面した


「? どうかしましたか??」

「い、いえ!!」


様子がおかしくなった致佳人に少女が声を掛けると彼は慌てて再び麺を啜った


「ふふっ、面白い方ですね」


この少年とは仲良くなれそうな気がした









麺を食べ終え、少女と桜で後片付けを始める

少女は鍋を流しに置き、準備しておいた急須を桜に手渡す


「彼とお話をするならお茶をお飲みになられるでしょう? 用意しておきましたからどうぞ」


そう言ってにっこりと微笑んだ少女

手渡された桜はお前には敵わねぇなぁ、といいながら受け取り、礼を言ってから居間へと戻った

少女はそれを見届けてから後片付けを続けた





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