後片付けを終えた後、少女は四人の話がまだ終わっていないのを確認して表の掃き掃除をする事にした

何故ならあの場にいても少女が出来ることが無かったからだ

紅葉が始まり、秋風が冷たく少し肌寒い

少女は溜まった落ち葉を履いていく

するとバタバタと誰かが駆けてくる音が聴こえた


「ここがはなの住んでいる所」


扉を勢い良く開け放し、はなと致佳人が出て来た


「はな・・・」

「名前、はな の」


呟く致佳人に名乗るはな

二人が駆けてきた事に驚いている少女


「こっちは春」


そんな少女、春を指してはなが言った


「えっ、あっ、よろしくお願いします」

「い、いえ! こちらこそ!!」


いきなり紹介された春は少し慌てつつも丁寧にお辞儀した

それを見た致佳人も丁寧にお辞儀した

二人が挨拶し終わったのを見たはなの胸辺りがふわりと光った


「はな?」


次の瞬間、はなが致佳人の手を引き彼に口付けをした


「!!!」

「まぁ!?」


突然の口付けに一気に赤面する致佳人と状況についていけない春

二人の口付けが離れた瞬間に家の中から桜と橘が駆けてきた


「はな!!」

「はなーー」


外に出て来た二人ははなに駆け寄る


「はなはここに居る。待ってる」


はなは致佳人にそう告げる

致佳人はその言葉の意味よりも何をされたのかを理解してショートしてしまったらしく後ろにバタリと倒れてしまった


「あっ、致佳人くん」


倒れる体を支えようとするも一歩及ばず、彼の体は地面へと倒れこんでしまった

だが、運良く頭は打っていないみたいなので安心した




あの後、致佳人はちゃんと東京に帰っていった

来た時よりもやはり、随分疲れていたが

するべき仕事を終え、春は居間にある縁側でお茶を飲んで寛いでいた

今日ははなも桜もいない

二人で仕事に行っているのだ

橘は自室で読書をしている


「今日は長閑な日ですねぇ」


春は縁側に腰掛け、自分で用意した茶を飲んでいた

茶菓子には少し前に御歳暮で頂いた最中を用意している

つい先日、致佳人がいて騒がしかったからか今日はいつもより一段と静かに感じられた

少しの間一人でお茶を楽しんでいると、二階から誰かが下りてきた

誰かといってもこの家には春ともう一人しか居ないので必然ともう一人しかないのだが


「春」


居間へと入った橘は縁側で春が寛いでいるのを見つけて声を掛けた


「橘。読書は終わったのですか?」


春は後ろに立つ橘を見上げ、尋ねた

橘はその問いかけに肯定の返事をしてから春の隣に彼女と同じ様に腰掛けた


「橘もお茶をお飲みになられますか?」

「あぁ」


彼の返事を聞いて春は彼の分の茶器を用意して再び元の場所に腰掛けた


「どうぞ」

「有難う」


二人でこうやってお茶をするのはよくある事だった

たいして何を話す訳でもなく、はなか桜が帰ってくるまで静かに茶を飲む

元々橘は口数が多い方ではない

だが春は橘との沈黙が辛いと感じた事はない

むしろ落ち着くと思っていた

前は苦手だったのを思い出す

何考えてるのかわからないし、不機嫌なのかわからないしで随分精神を遣っていた気がする


最近は大きな出来事が起きておらず、安定した毎日をおくっている

だが恐らく先日、致佳人がこの家に来た事で何か大きな出来事が起こるだろうと春は考えていた

致佳人が帰った後、桜と橘から彼の異質について聞いた

北野天満宮で見聞きした事の記憶を橘が焼こうとしたが焼けなかったらしい

桜の結界に入れた事といい、彼に何かあるのは明らかだった

そんな彼が裏七軒に現れたのにはきっと何かあるに違いなかった

だが、春はこのまま事態が変わらなければいいのに、そう思わないでも無かった

彼女は元々裏七軒のメンバーではない

闘える訳でもなく、透視が出来る訳でもない

だから事態が進む事を望んでいない

勿論、橘や桜、はな等豊臣方の者達の立場からすれば進む事が良い事だとは解っているのだが

春は隣で静かに茶を啜る橘を伺う

彼は彼で何か思案している様子だ


「なんだ」


じっと見過ぎたのか、橘が春に視線を寄越した


「いえ、ただ・・・少し考え事をしてまして。橘に何か言いたい訳では・・・」


実の事をいうと、彼女は橘に少し詫びたい気持ちはあった

事態が進む事を望まないという事は彼の目的も達成されなくても良いと思ったのも同然だったからだ

それは余りにも酷い望みではないだろうか

春は彼にも世話になっている身だ

普通なら彼の望みを優先し、叶う事を望むべきだった

それについて詫びたかったが、いきなり詫びられても彼が困るだけである

そう思い、慌てて誤魔化した


「そうか。相変わらず可笑しな奴だ」


橘はそれ以上は聞かずにいてくれた

春の気持ちを察して気遣ってくれたのだろう

春はそんな彼の優しさに心の中で感謝をした











彼女の望みとは裏腹に

この数ヶ月後事態が急速に動き出すのであった

新たな出会いをもって…




-be continue-

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