中庭から子供たちを連れて去った後、一応は叱っておくべきかと思ったのだが、すでに子供たちはすっかり怯えていて、反省もしっかりしていたみたいだった

エルティはこれ以上、きつく叱る必要はないだろうと判断し、子供たちの親に後は任せた

一応、厳重注意ということで話はついたが、かなりの特例だった

おそらく、あの貴族にはイザナ殿下の仲裁が効いたのだろう

子供を親に引き渡すことを終えた後に、場内警護の衛兵たちと合流した

すでに中庭での茶会は終わり、警護から離脱していたエルティは夜会の警護から参加することになるそうだ

夜会の警護が始まるまでの時間は夕食をとる時間とされ、衛兵など城仕えをする者が使用する食堂で夕食をとることとなった

エルティはメフィスとフェレスと合流し、食堂で夕食をとるために移動した

そして各々の食事を受け取ってから席へとつく

エルティの正面にフェレス、隣にメフィスが座わっている

三人の中で一人だけイライラしている様子のメフィスは、茶飲みをテーブルに音を立てて置いた


「っにしてもほんと何様だって感じ!! エルティに掴みかかるとか…。あの金髪の人が止めてなかったらあの腕削ぎ落としてたよ!」

「お前、だから物騒だって…。って、えっ!? なんだよその話、聞いてないぞ??」

「メフィス、心配してくれてありがとう。けど、そんなことをしてはダメよ? 騎士になっている以上、怪我などは承知の上なんだから」

「そ、そうだけど…。それでも、エルティが傷つくのは嫌なんだもん。だからもうあんな無茶はしないで! そりゃあ、エルティは優しいから、目の前であんなことがあったらほっとけないかもしれないけど…」


その言葉に、エルティはメフィスがどれだけ自分の身を案じていてくれていたのかがよくわかった

そして同時に逆の立場だったらどれだけ心配するかということも


「本当にごめんなさい、メフィス。心配させてしまって。もう無茶なことはしない、約束するわ」

「ほんとのほんとだからね…」

「ええ、本当よ」


エルティが優しくメフィスの髪を撫でてやれば、彼女は心地よさそうに目を閉じ、微笑んだ


「めでたしめでたし、ってやつだな。ってそうじゃねぇだろ!? 俺も話に混ぜろよ…」


一人だけ警護場所が違っていて、完全に話が分からないフェレスは少し涙目になってそう訴える

それによって、フェレスの存在を思い出すエルティとメフィスであった

エルティは中庭で起こったことを事細かくフェレスに説明してやる

すると、フェレスもエルティの身を案じる言葉をかける


「俺はいつもそう言ってる。エルティは自分の身の安全を優先させてほしい。…まぁ、体が勝手に動いちまうのは仕方ないと思うけど」

「ええ。二人の言うとおりだわ。心配してくれてありがとう」

「…おう」

「当たり前!」


エルティは二人と無茶はもう二度としないと約束を交わす

そして、夜会の警護が始まるまでの休憩を三人でゆったりと過ごす

エルティとメフィスとは違う場所を警護していたフェレスの話を聞いてみると、相変わらずダグと仲良くやっているようだった

フェレスの話に笑ったり、相槌を打ちながら聞くエルティであったが、脳裏をかすめるのは金髪の人の事

あの場の誰よりも存在感に満ち溢れたクラリネスの次期国王であるイザナ殿下

騒然としていた場は、彼が言葉を放っただけで、静まった

それは彼の何かがあの場にいるものを圧倒させたからだと思う

エルティが出会ったことがない種類の人

夜会の警護が始まれば、また会うことはできる

なぜだか、あの人の空気に触れてみたい、と思った

そう思った理由はわからないけれど




ー第5話おわりー

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