歪んだ檻(5/5)


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「…お仕置きが足りなかったかな」


浴室から出て悠人の体を冷やさないように手早くバスタオルで体を拭いて服を着せて髪を乾かし終えたところで悠人が鏡越しに自分をジトっと睨みながら呟いた。


「えぇっ? 恐ろしいこと言わないでくださいよ」

「だって、あっという間にいつも通りの睦月に戻るんだもん。さっさと片付けてさっさと寝るつもり?」

「いや、玄関にお土産を置きっぱなしにしてるんですよ。それを早く冷蔵庫にしまいたくて。というか、悠人さん今食欲あります? できれば今日中に食べた方が良いと思うんですけど」

「…それって何?」

「悠人さんの一番好きな食べ物です」

「…チョコレートケーキ…?」

「正解。今日行ったお店の裏メニューで、すごく美味しいって評判なんですよ。気まぐれで作ってるみたいで頼んだときはまだ作り始めたばっかりだったので帰ってくるのが遅くなっちゃいました」


悠人はまるで子供みたいにわかりやすく表情を明るくさせたと思いきや、もどかし気にくしゃりと髪を掻いた。


「なんでっ…、そういうこと早く言わないかな」

「悠人さんを驚かせたくて」

「…睦月は本当に性格が悪い…」

「あれ? 喜んでくれると思ったのに。ケーキいらないですか?」

「食べるよっ…!」


悔しそうに自分を睨む悠人の顔は赤らんでいた。
…可愛いな。どんな表情も、何をしていても、悠人の全てが愛おしい。


「僕はいつだって悠人さんのことばかり想ってるんですよ」

「…うそつき」


そう言いながら悠人は少し乱暴に自分の顔を引き寄せる。だけど重ねられた唇は温かくて優しかった。




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