その毒をください(5/5)


「大丈夫だよ。こんなのちっとも痛くないから」

「でも、駄目だよっ…」


血が落ちないように気を付けながら兄さんの元へ歩み寄る。


「口開けて。こぼれちゃう」

「…っ」


おずおずと開かれた口に指先を添える。

溢れた血液は手のひらにこぼれ、指を伝って兄さんの口内に注がれていった。


「んっ、…く…!」


ゴクン。と兄さんの喉が鳴る。

戸惑いを見せていた表情はたちまち蕩けて欲情が露わになった。


「こんな傷、大したことないからすぐ治るよ。痛くなんかないし、むしろ兄さんの舌が気持ちいいからもっと舐めて欲しいって思うんだ」

「ふっ……」


指に伸びた舌が血を一滴も取りこぼさないようにと絡みつく。

唾液と血が合わさる水音や、唇で軽く吸う淫靡な音がキッチンに響く。


「今の兄さんの表情とか仕草もすごく可愛い。こんな姿今まで一度もみたことがなかった。今の方がずっと魅力的だよ」


バクバク跳ねる心臓を抑えてあくまでも余裕ぶって兄さんを見下ろしながら髪を緩やかに撫でる。
紅潮しきっている耳の先をなぞると兄さんは子猫みたいな鳴き声をこぼして体をわななかせた。


「僕の血、美味しい?」

「う、んっ…美味ひぃ…っ」


手のひらに広がっている血を夢中で貪りながら兄さんは甘ったるい声で答える。

もう理性は完全にぶっ飛んでしまっている様子だ。


「…ね、まだ射精してないから辛いよね? ズボンとパンツおろして自分で扱いてみせてよ」

「ふ、…っぅう」


本人も熱を今すぐに吐き出したいと思っていたのか、何の抵抗もなく膝まで衣服をずり下ろして強直した肉塊を揺さぶり始めた。


…僕の前に跪いて僕の血をすすりながら自らのモノを動物のように扱き立てる兄さん。

なんて最高な光景だろう。

貧血でも心の歪みでもなく、あまりの興奮に目まいが起こる。


「い、つき…っ、ごめんね…」


喘ぎ交じりに兄さんが言葉を紡ぐ。


「…ん、何が?」

「樹が、ずっと苦しんでたこと…っ全然気が付かなくて…ごめ、ん…っ」

「ああ…、そんなこともうどうでもいいんだよ。兄さんの方が僕の何倍も辛い思いをしていたんだから。僕の方こそ気づかなくてごめんね。…これからは僕が全部受け止めてあげる」

「…っふ…!あ、あっ」


くしゃくしゃと頭を撫でると兄さんは涙を滲ませて甘えるように僕の手にすり寄って血に舌を這わせていく。


「もう何も考えないで。今まで我慢してきた分、全部吐き出して」

「ぁッ、はぁっ、は…っ、もう、イきそぅ…っ」


見ると、床に滴り落ちるほどに先走りが溢れて竿全体が痙攣してるみたいに波打っていた。


「うん。イクところ見せて」

「ふあぁっ…!樹…っ、ぁ…んっ、んんんっ!」


新しい傷におもむろに吸い付いて血を啜る。そのまま兄さんは何度も大きく肩をビクつかせて白濁の熱情を放出した。


「…っく…、はあっ、はぁ! …ん…っ」


射精して息を切らしながらも兄さんは名残惜しそうに傷口を舐め続ける。

僕はしゃがんで床に飛び散った精液をすくって舐め取り、兄さんの顎を掴んで口づけた。


「んっ…!ん、ふ…っぅ」


深く唇を重ね合わせて舌を絡める。兄さんの舌は灼けそうなくらい熱くなっていた。


「ふふ、すごい血の味」

「んあっ!ぅ…!」


濃い鉄の匂いに眩みつつ、兄さんの股間を指先で撫で上げる。

そこは果てたばかりにも関わらず、はち切れんばかりに固さを保っていた。


「まだまだイけそうだね」


兄さんの口の端についている血を舐めて微笑みかける。


「…兄さんの部屋行こ?」


兄さんはゾクゾクと身震いしながら「うん」と蕩けた声を返した。







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