※※第364話:Make Love(&Foam).221
「最初は二人でご飯を食べて、あっ、僕が作ったご飯です。まあ、そんな大したものじゃないんですけど……オムライスとかそんな感じで……」
「料理ができる男の子っていいよねえ。屡薇くんなんかほんと、カップラーメンですらまともに作れないよ?」
「カップラーメンて、まともに作らないほうが難しいと思いますが……」
思い出しながら語り始めた綾瀬は、食事のメニューの部分をほとんど省略してしまった。
軽食のような表現になっているが、実際にはホラー級のカロリーだったわけである。
料理ができる男の子を通り越して、ホラーな料理を提供するのが、綾瀬の実態だった。
なのに引き合いに出された屡薇は、お仕置きくらいしても良さそうだった。
あとさすがにカップラーメンは、まともに作れる、沸かしたお湯を注いで3分とか5分とかはぼーっとして彼女のことを考えていればいつの間にか出来ているので。
「それで、二人でホラー映画を観ていたんです。タイトルは『シュガー・カニバリズム〜君の臓器を僕にちょうだい〜』と『血だらけのアレ』と『軟禁殺戮生活が育む僕たちの青春群像』です。萌ぴょんもホラー映画大好きなので、作品には問題ないと思います。」
「パンケーキ食べてる人の前で言うタイトルではないけどね。何が血だらけだったのかだけちょっと気になっちゃったじゃん。」
綾瀬は食事のメニューは省略したくせに、鑑賞していたホラー映画については詳らかに話した。
食欲が若干失せた真依は、これ以上奢りたくないが故の作戦ではないかとすら思えてくる。
『血だらけのアレ』だけはあとで、検索してみようと思っている。
「けっこういいムードだったんですが、急に萌ぴょん、慌てて帰っちゃったんです。そのあとから連絡がつかなくなってしまって……」
俯き加減で、綾瀬は明かした。
彼女の近くにコンドームが落ちているように見えていたのを、いざ拾い上げてみたらガムの包み紙だったことを話すのは忘れている。
「綾瀬くんの性格からして、だいたいわかった。」
「ええっ!?ほんとに!?」
肝心な部分をいっさい聞かされていない真依だが、原因を導きだしたようだ。
さすが恋愛上級者は違うと、綾瀬は度胆を抜かれる。
「綾瀬くんて、勘違いしてることがけっこう多いから、それが原因だと思う。萌ちゃんて、綾瀬くんが思ってるほどホラー映画好きじゃないっていうか、ほんとは苦手なんじゃない?でも綾瀬くんにはほんとのことが言えなくて、悩んでたんじゃないかなあ。」
真依は綾瀬の性格を考慮した上で、じつは萌はホラー映画が苦手なのを綾瀬には言えず、好きだと勘違いされている時間に堪えきれなくなったのではないかと推測した。
綾瀬の勘違いが原因であることだけは、読みが当たっていた。
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