※※第364話:Make Love(&Foam).221
月曜日、美容室はだいたいどこも休日なのでご多分にもれず休みだった真依は、同じく休みの綾瀬に呼び出され小洒落たカフェにいた。
どうしても今日相談に乗ってくれないなら僕死んじゃいます、という半ば脅迫のメッセージを送られた真依は、全面的に綾瀬が会計を持つならという条件つきで行きたかったカフェに来ていた。
屡薇とのデートに来られる場所かどうかの下見が、真依にとっては最も重要で、綾瀬の相談は二の次だった。
屡薇からしてみれば、デートの下見なんかいいから綾瀬と二人っきりはやめてくれと言いたい状況だろう。
「高良先輩……聞いてくれます?」
「うん、聞くよ。聞かなかったらここ来てないから。」
綾瀬は気分でエスプレッソを頼み、真依はカフェラテと人気のパンケーキのセットを頼んでいた。
パンケーキには有料のホイップを追加してもらってある。
「僕、理由はぜんぜんよくわからないんですが……萌ぴょんに嫌われたみたいなんです……」
「ふうん。」
エスプレッソがぼたぼたと零れ落ちそうなほど手を震わせ、振り絞った綾瀬の前、真依は美味しそうにパンケーキを食べている。
「だから、恋愛上級者の高良先輩に、アドバイスがもらいたくて……」
一口飲んで苦すぎた綾瀬はカップを置き、スムージーを頼めば良かったと後悔した。
恋でちょっと苦い思いをしているのに、現実的に苦いエスプレッソを頼むべきではなかった。
「思い当たる節がないんだったら、アドバイスのしようがないじゃん。」
呆れた真依はごもっともな返しをしながら、パンケーキに添えられたベリーの甘酸っぱさを堪能している。
「えっと……では、昨日のホラー映画大会でのことを、最初から詳しく話してみるので……原因を見つけていただきたく……」
「ホラー映画大会……?何か、地域で開催されてたイベントとかそういうやつ?」
「いえ、僕と萌ぴょんの二人だけで行っている、恒例のイベントです。」
「ふうううん……それ、ホラー映画デートとか、そういう名前にはできなかったのかな?」
「恥ずかしくて……」
真依はまず、綾瀬と萌はホラー映画大会という公のイベントに参加したのかと思ったのだが、そういう名前の個人的なイベントを二人で開催していたことにやや驚いた。
どうしても公のイベントっぽくなってしまうところが気になり、もう少し色めいた名前にすればいいものをと思ったりした。
でも綾瀬は恥ずかしくて、公のイベントっぽい名前を貫きたいようだった。
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