※※第349話:Make Love(&Sex aid).50








 授業から戻った醐留権先生は、着席をする前に唖然とした。
 机の上に勝手に写真立てが置かれており、そこに、何度か見たことがある男の写真が飾られていた。



 「醐留権先生……それ、さっき綾瀬先生が泣きながら置いていきましたよ……?」
 「は?」
 綾瀬兄はサイコパスと診断されたのがよほどショックだったのか、贈り物で自分はサイコパスじゃないアピールをしたいのか、そこらへんは定かではなかったが情緒が不安定にはなっていそうだった。
 一連の行動はホラーに値すると思い、ホラー関係に強い醐留権先生は呆れかえる。
 さすが兄弟なだけあって、お兄ちゃんもたまにホラーな行動を取る傾向にあるようだ。

 怯えながらも親切に教えてくれた横科先生は、またしても怯えながら説明を付け足した。

 「お、弟さんの写真らしいです……」

 と。




 (弟はこいつか!)
 ゾーラ先生はようやく、以前に自分をストーカーしていた男と綾瀬先生が兄弟なのだと知った。
 言われてみると、顔立ちはよく似ている。
 直ちに写真立てをゴミ箱に放り込もうとしてから、醐留権ははたと気づいた。

 この男は、自分と同じ境遇に置かれているのだと。
 綾瀬兄に対しては嫌悪感ばかりが募る中、一樹に対しては多大なる同情の余地が生まれた。
 おそらくこの写真も無断で使用されたものであり、彼は悪くない、むしろ被害者なのだという念が醐留権に落ち着きを取り戻させた。

 意外にも写真立てはぞんざいに扱われなかったため、意味がわからない横科先生はますます怯える。
 頭皮を労りたくても、怯える心を鎮めることはできない、だって醐留権先生の威厳が怖いから。




 黙ってスマホを取り出した醐留権先生は、とある人物にメッセージを送った。
 以下メッセージ。

 “君の恋人をストーカーしていた人物に、会わせて欲しい。
 連絡先位は知っているだろ?”
 以上がメッセージ。


 送った相手はもちろん、屡薇だった。
 醐留権は綾瀬と直接会って、話をしたくなっていた。
 自分と同じように愛情の履き違えが酷すぎる兄を持つ弟と、兄への愚痴というか悪口というか罵詈雑言というかを、ぶちまけあいたくなっていた。
 よって、屡薇は巻き込まれることがこの時点で確定した。


 綾瀬先生の不可解な行動、じつは弟とも知り合いだった醐留権先生、弟に会うために経由される屡薇……もうこけしちゃんが悦びそうな要素てんこもりとなっている。
 ここに薔も巻き込まれてくれたら言うことなしだった。

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