※※第349話:Make Love(&Sex aid).50








 「夕月さんって本当に、薔のことが好きですよね?」
 帰国してさっそく薔を誘うなんて夕月さんさすがですと思いながら、ナナは言葉にしてみた。

 「おまえまた桜葉にノート借りたのか?」
 「違いますよ!そういう好きではないです!」
 最近ノートにナイスガイ鎧が登場する確率が高いせいで、薔は疑いを持つ。
 修正をしたいナナは純粋に人としての意味だと力説したいのだけど、上手い説明文が見つからない。


 (そういうぅ好きだと思うぅぅ……)
 たまたま聞こえていたこけしちゃんは次の作品をどのカップリングでいくか考えながら、しっかり突っ込みを入れた。
 そういう好きの感情を持っているのはあくまでも、ノートの中の話だと言うのに。





 「まあ、途中色々あったが、夕月さんには物心つく前から可愛がってもらってたらしいしな。」
 ふと、ノートについて責め続けることなく、薔はどこか感慨深そうに口にした。
 そういう好きを表現したかったナナはまさにそういうのが来て、わざわざ来てくださった彼の優しさに感動する。

 でも、頭をよぎったことがある。
 別荘で見た、あの写真。
 物心つく前からということはやはり、薔が生まれる前から夕月と薔の両親はとても親しい間柄だったのではないか、と。



 「あ、あのっ、薔?」
 「……ん?」
 ナナは尋ねようとして、戸惑った。
 それはきっと夕月が、隠し続けてきたことなのだ。
 安易に尋ねて良いことだとはどうしても思えなかった、“薔のお父さんとお母さんは薔が生まれる前から仲良しだったんですか?”なんて。
 薔が知っているか否かに関係なく、夕月のためにもそこには触れてはいけない気がした。

 「どうした?」
 何か言いたそうにしている彼女の顔を覗き込み、薔は心配そうな声を掛けてくる。
 会話が聞き取れない周りはもうあの仕草だけで、妊娠できてしまいそうな勢いになっている。




 「…………ゅう、」
 「ん?」
 ナナは声を振り絞った、顔の距離が近くてドキドキして、彼を安心させられるならどんな内容でも良かった。

 「チュウくらいなら、したいと思います……」

 全くフォローになっていないが、そのくらい好きという意味で。
 こけしちゃんが気絶して下手すれば昇天するから止めてあげて。




 「あ?」
 「ごめんなさーい!だって、唇がエッチなんですもーん!」
 今しがたまで「ん?」だったのが「あ?」に変わってしまいました。
 顔が近くてよく見えるせいなので、これはくちびるの罪です。

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