おおー、頑張ってんなあ。先生に頼まれた書類をテニス部まで持って来たんや。…うん、持って来た。持って来たんやけど…入れへん!周りはずらーっとファンの子達で囲まれてて、こんな中に入れるわけないやろ。私かて空気読めへん子やないわ。どないしようかねー…。
「どないしたん?」
声掛けられて後ろを向けば謙也先輩が。前にも云うたけどなんでおんの?サボりか?サボりすぎやろ、謙也先輩。ま、今回は触れないでいてやろう。丁度いいタイミングで来てくれたんやし。
『ナイスタイミングやん、謙也先輩』
「何が?」
『これ、テニス部に持ってってくれへん?先生に頼まれたんやけど流石にこの中には入れないですわ』
「おー、了解。サンキュな」
謙也先輩に書類を渡してからさあ帰ろうとテニスコートと謙也先輩に背を向ける。
「部活見ていかへんの?」
『え、見なくちゃいけないん?』
「………」
『……わかりましたよ。少しだけやで?』
無言の圧力って奴か。ホント少しだけやで?すぐ帰るで?わかったわかった、っていう会話を永遠と続ける。念には念をって奴や。
「ここでいいんか?」
『ここでいいですよ。ここからだってテニスコートは充分見えるんやから』
なんか云いたげな謙也先輩の視線を無視する。きっと光にいること教えなくていいんか、とかそういうことを云われるに違いない。やから敢えて無視。
『…あ、』
「どないした?」
光はっけーん。横にいる子は、前光に告白してた―――、
「あの子な、うちのマネージャーやねん」
『へえ…』
なんや、光も満更じゃなさそうな顔してるやん。幼馴染みでずっと一緒にいたからかそういうのわかってしまうんやで?
『―――…、』
「どうした?」
『へ?何がッスか?』
「なーんか微妙な顔してるで」
『うわ、謙也先輩にそんなこと云われるなんて最悪や』
「それは俺の顔が微妙云いたいんか!?」
『そこまでは云うてへんやろ。謙也先輩の被害妄想ですぅ』
「お前は俺を先輩として敬えや!」
笑顔を作る。微妙な顔…か。どんな顔してたんやろな?私にはわからへんわ。光とあの子が仲いいのに嫉妬?いや、それはないやろ。多分、この関係が壊れるのが嫌やった。光と私と謙也先輩がいて、馬鹿やって笑って、減らず口きいて。それなのにあの子が入って来て光取られて、私達は置いてきぼりで。それが嫌なんや。だから恋愛感情もないのに私は光と付き合ってるんやと思う。光が離れていかないように。……それも、そろそろ終わりにしよか。私の我が儘は終わりにしよ。
『……先輩』
「ん?」
『私、ちゃんと笑えること、出来るやろか?』
「……、どうやろなあ?」


さようなら恋ごころ



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