『光と帰るなんて久し振りやん。何日振りやろ?』
「…嫌みにしか聞こえへんわ」
今日は部活が雨で休みとかで部活がオフらしい光と本当に何日振りかに一緒に帰る。私が云った言葉、嫌みに聞こえるんか?それはすまんかったなあ。純粋な言葉を云っただけなんやけど。今度から気を付けるわ。
「あ、傘忘れた」
『なんでやねん!今日午後から雨やって天気予報のお姉さんが云ってたやろ!』
「…朝遅刻しそうで天気予報観る暇なんてなかったわ」
『…折り畳み傘は?』
「ない」
仕方あらへんなあ。私の傘に入れてやるか。真っ赤なチェックの傘を開いて光を待つ。
『入れてやるから速く来い』
「ん、サンキュ」
こんなちっこい傘じゃ、お互い肩がはみ出すなあ。ま、仕方あらへんか。光がでかすぎるんや。もうちょいちっこなれ。
『…小学校の頃、こうやって一緒に帰ったの覚えてるか?』
小学校の頃、光が傘忘れて一緒に相合い傘して帰ったことがあった。その頃は光も部活なかったから毎日一緒に帰ってたっけ。なんや、懐かしいなあ。
「何回もありすぎて覚えてへんわ」
『それもそやな。毎回傘忘れるんは光やしー』
「そやったな」
『あの頃は楽しかったなー』
何気ない一言。意識もしないで口からぽっと出た一言やった。だけどその何気ない一言に光と私は気まずい空気になってしもうた。うわ、云わんかったら良かった。沈黙が辛いわ。
「………そやな」
『な、光。久し振りに手ェ繋いでもええか?』
駄目元で聞いてみた。というか私なりに気を使ってこの雰囲気をどうにかしたかったんや。それに光と手なんて繋いだの何ヵ月も前やし。たまにはいいやろ?
「ほら、」
『え、まじで?』
「ピカチュウが云ったんやろ。早くしいや」
光の手をぎゅっと握る。冷た、と思った。私よりも体温低くないか?隣を歩く光を見上げると光のはみ出した肩はびちょびちょに濡れていた。…そう云えば、私の肩は全く濡れてない。……光のそういう優しいとこ、私、結構好きやったんやで。過去形なのはきっと私の光に対する恋愛感情がとっくに薄れているから。


想いが過去に変わって



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