「今日部活見に来んか?どうせピカチュウ、暇やろ」 謙也先輩にそう云われたから私は今テニスコートへ向かっていた。謙也先輩とは光関連で知り合ったんや。結構仲いい方やと思う。お互いに本音を云えるって云うんか?だから謙也先輩は私を怒らせるのが上手いんやろな。今回だって私は野菜の大安売りがあるから行けん云うてるのに勝手に暇や決め付けるんやもん。最後の言葉は疑問系やなかった。断定やった。まあ、私は約束したからには行くんやけどな!…やけどこんなに帰りたい思ったんは初めてや。キャアキャアキャアキャア煩いっちゅうねん!なんや、動物園か!?動物園やってもうちょい静かやで!うー、帰りたい。帰って大安売り行きたい。 『…はあ、』 「溜め息吐いてると幸せが逃げるで」 『………はあ、』 「え!?今明らか俺の顔見て溜め息吐いた!?」 後ろから現れた謙也先輩に溜め息を聞かれた。というかなんでフェンスの外にいるんや。部活中やろ。暇なんか?わざわざこっちは謙也先輩が見に来い云うたから来たのに遊んでるんか? 「痛い痛い痛い!冷たい視線が痛いわ、阿呆!」 『煩いッスわ、謙也先輩』 「…お前等ホント似てるわ。言い方とか雰囲気とか」 “お前等”というのが誰を指すのかはすぐにわかった。私と光や。謙也先輩になんて返したらええんかわからなくて視線がさ迷った。……謙也先輩ごときにこんなに戸惑わされるなんて一生の不覚や。 『…そない似てます?』 「似てる似てる。東京の人間風に云うと“ちょ〜似てる〜”か?」 『キモいッス』 「…やっぱ似てるわ、お前等」 『まあ、似てるとしたらそれは幼馴染みやからですかね?』 「プラス恋人、やろ?」 『…………』 たまに核心を突いたこと云うんやから、謙也先輩は。ホント嫌になるわ。鈍いんやか鋭いんやかわからへん先輩やなー。 「お、あそこに財前おるで」 『え、どこですか?』 「…前は毎日テニス見に来て、財前を誰よりも真っ先に見付けるプロだったのになー」 『ぶは!プロってなんですか、プロって。そんな競技ないですから』 面白いやん、先輩。なんか負けた気分やわ。 「俺はまじで云ってるんやけどな」 『…確かに、以前はそうでしたね。やけどね、先輩。人って変わるもんやで』 永遠の愛なんてないし永遠に一人を想い続けることなんて出来ないやろ?毎日光のテニスを見にテニスコートに行く?毎日真っ暗な時間になるまで待たされる?ないない。絶対無理や。 「…まあ、なんかあったら俺に相談しろや」 『……ありがと、謙也先輩』 ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。髪型が乱れるやん!全く、謙也先輩の癖に格好付けやがって。
君のこと目で追わなくなった
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