08 : 無関心なフリ 多串くんと仲睦まじく喋るさくらを見る。教育者としての立場だったら微笑ましく見守るもんだろう。もう餓鬼じゃねェんだ。生徒の恋愛にとやかく口を出す必要はない。それが純粋な愛とかいうもんだったら尚更な。だけどそれが好きな女ともなると話は変わってくる。好きな女が他の男と喋ってんのは気持ちいいもんじゃねェだろ? 「せんせー」 「―――…!なんだー、総一郎くん」 「総悟でさァ。いい加減覚えて下せェ。それともわざとですかィ?だったらたち悪ィや」 「あー、悪ィ悪ィ。気を付けるよ、総一郎くん」 「だから―――、はあ、もういいでさァ」 溜め息を吐く総一郎くんを横目で見詰めた。 「先生、土方さんのこと凄い視線で見てやしたよ」 「は?何、俺そんなだった?」 「いや、違うか。見てたのは土方さんじゃなくてさくらですかねィ」 「……そんなわけねェだろー?」 「さくらのこと好きなんですよねィ?今更隠さなくてもいいでさァ」 おいおい、なんだよ、この末恐ろしい子は。前々からサドだとは思ってたけどこんな恐ろしい子だとは俺ァ知らなかったぞ? 「視線で人一人殺せそうでしたぜ?」 「総一郎くん、」 「あー、でも俺ァ土方さんにも、勿論アンタにもさくらくれてやるつもりないんで」 「……総一郎くんだって人一人殺せそうな目してるぞ」 こんなにライバルいるんだなー。これだからさくらは人気者すぎて困るんだ。しかもそれが無自覚だと尚更、な。 無関心なフリ (教師と生徒という立場があと一歩を踏み出させない) [しおり/戻る] ×
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