09 : どさくさにまぎれて 本当に私ってなんで国語だけ出来ないんだろうか。他の教科では最低でも平均くらいはとっている。国語だって別に漢字が苦手というわけではない。わけではない、のに。 「あー…あんま落ち込むなよ。な?」 『ホント、すみません。毎回補習に付き合わせちゃって』 「そんな涙目になんなよ!世の中には全教科出来ない人もいるんだからァ!それに比べたらさくらはましだって!俺が保証する、うん」 ぐでーっと机に突っ伏している私を本気で心配したのか銀八先生は色々と言葉を掛けてくれる。その言葉が結構胸に突き刺さるんだが。先生も善意で云ってくれてるんだよ、ね? 「だから、」 『あはは、慰めてくれてるんですよね。ありがとうございます』 顔を机から離して笑ってみせれば先生は安心したように溜め息を吐いて額に手をあてた。 「はあ、まじ焦った」 『すみません』 「さくらに泣き出されたらどうしようかと思った」 『冗談ですよ、冗談。中学の頃から国語だけはどうしても駄目だったんで落ち込みはしますけどもう慣れちゃいました』 「ってことはさ、中学のときも補習とかやってたりしたのか?」 『…まあ、少なくはなかったですね』 あの頃も今みたいに補習とかしてたなあ。最後の方には先生も呆れちゃって、プリントだけ置いてさっさと帰られちゃったんだっけ。あのときは申し訳ない気持ちで一杯だった。 「それってさ、要は今の俺等みたいな感じなんだろ?教師と二人っきりってやつ。――――…俺以外がさくらと二人っきりで補習してるとか、なんかむかつくわ」 『―――…っ!』 どういう意味ですか、それ。深い意味はないですよね?だってその言葉、当時の先生に嫉妬、してるみたいじゃないですか。なんでそんなこと云うんですか?何気ない一言の筈、なのに。先生にそんなこと云われたら期待、しちゃうじゃないですか。 どさくさにまぎれて (国語の先生女の人でした、そう云い出すタイミングはなくて) [しおり/戻る] ×
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