14.そのひとについての噂話

土方、永倉、家永、牛山、尾形、そしてnameの6人による奇妙な同居生活が始まった。



<家永カノの場合>
そうね、nameちゃんは確かに抜群の美人ですわ。でも彼女の場合、わたくしがほしいと思う部分は特にありませんの。

なぜなら彼女の魅力は、もちろん外見にもありますが、特にその生の瑞々しさにあるから。

凛とした瞳、頬のうつくしい血色、民族衣装に包まれた華奢な体躯、軽やかな足元に、生き生きとなびく長い結わえ髪、澄んだ低めの声で夜な夜な紡がれる歌。それらを束ねるのが彼女の生です。

わたくしが同物同治を用いて欲しいと思うのは、あくまでも体の具体的な部分であって、そのためには肉体を欠損しなければなりません。しかし彼女の場合、まとっているのは陽の気。強い光を放ちながら、欠損した途端に消えてしまう、とても儚いものなのです。陰をまとって生きてきたわたくしにとって彼女は眩しすぎますのよ。そう、彼女はもっとも同物同治と相性の悪い人種と言えますわ。

ただ、同物同治と相性が悪いだけで、彼女とお話しするのはとても楽しいです。素直でかわいい、妹みたいな子ですわよ。

ほら、彼女がお台所で呼んでいます。もう行かないと。


<牛山辰馬の場合>
nameはいい女だが、この牛山辰馬が抱きたいと思ったことは不思議と無い。

まずは身体が細すぎるということがあるがな、上背があるのは気にならないが、あいつの場合女らしい肉というものがほとんど付いてねえ。なんでゆったりした服を着ているのにわかるかって?舐めてもらっちゃあ困るな、こちとら百戦錬磨の色男よ。

もっと言うなら、清潔感がありすぎる。
元はアイヌの猟師だったか?でかい熊とか鹿とか獲って捌いていたんだろうが、熊どころか虫も殺さねえような顔をして、和人の生活をしている姿からは想像もつかねえな。よくあれだけこまごまとよく気が付くもんだ。

戦力になるかって?永倉のじいさんが茨戸じゃ無駄のない動きで敵の親玉を仕留めたって言ってたが、本当かよ。


<土方歳三、永倉新八の場合>
ああ、茨戸では手柄であった。鐘を撃ったことも含めて、な。
ただし、nameはnameなりに悩んではいるようだ。我々のような、利害関係だけで人を躊躇なく殺める、修羅になる覚悟は、まだできていない。茨戸での働き、課題としてはようやく及第点というところだ。

修羅に化ける可能性か。有ると言えば、有る。無いと言えば無い。あやつがどちらの道を選ぶかは、わたしたちにもわからぬ。

ただ、中途半端な位置にいる今が一番苦しい筈だ。そうして自滅していく者も、大勢見てきた。
我らとてnameのことは気に入っている。便利な駒だからというわけではなく、清廉で高潔な魂を持っているからだ。そういう人間の修羅になった姿はうつくしい。

そうだな、組ませるなら牛山や家永より、尾形だろうか。互いに欠けているものが見えれば、nameの道も自ずと啓けるだろう。


<尾形百之助の場合>
……。






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