6.冒険のはじまり

キロランケをまじえた杉元一行は、網走へ出発する前にアシリパのコタンに寄ることとなった。
「nameは必ず力になってくれる。」と、アシリパが言ったからである。

「でも、nameさんをこんな荒っぽい旅に巻き込まなくても……。」と杉元が反対すると、
「わたしは、アシリパが頼ってくれるならすごくうれしい。」とname。

事実、nameはアシリパが自分を信頼し慕ってくれていることの証が素直にうれしかったのだ。

「そうだ、それにnameはすごく強い!」
 nameは優秀なアイヌの狩人である。銃や罠を使った猟師としての腕は確かであり、人を殺めたことこそないが、いざとなれば先日の覚悟通り、白兵戦もこなすだろう。山で生きていく知識もアシリパ同様に深く、戦力になることは間違いない。

谷垣の傷をいちばん診ていたのはnameだったが、傷自体はほぼ治っており、あとは外を歩く訓練の積み重ね、そして谷垣自身の身の振り方を考える段階にきている。


「うちのコタンの馬も一頭借りていこう。谷垣、フチをくれぐれもよろしくね!」


こうして、nameも杉元一行に加わることとなったのである。


「まずは札幌に向かう。」とキロランケ。曰く、知り合いの銃砲店があり、そこならアシもつかないとのことだ。
小樽にも銃砲店はあるが、できることなら小樽の街中は避けたいnameも賛成し、まずは南東へ向かうこととなった。


道中、

「そういやさ、なんでnameさんは小樽に行きたくないの?」
と杉元が問うと、

「ん、元婚家があってね、家出同然で離縁してしまったし、あちらはあちらでけっこう幅広くお商売してるから。ちょっとどうしても、苦手意識が強くてねえ。」
と、name。

「nameはコタンに帰ってきてから小樽に降りたことがないな。」アシリパが言う。
毛皮やらなんやらは、結局男が売りに行く方が信用があり高値を付けてもらいやすいことから、叔父任せにしている。

「女心はいろいろややこしいのネ。」白石が同調すると、
「いやそれは絶対わかってないでしょ、シライシ。」とname。
「いやーんnameちゃん辛辣!」

こうしてじゃれたり、居眠りしてなぜか尾根から落ちた白石を探したりしているうちに時間を食い、一行が札幌に着いた頃にはなぜか草臥れ果てていたのだった。

「久しぶりの旅だからはしゃいじゃったなあ。」馬に乗りながら器用に寝るアシリパを起こしながら言う。


キロランケの知り合いという銃砲店にて、店主がnameの背負っている銃に口を出した。
「お嬢さんにその銃は、ちょっと重すぎやしないかね。」
「そうだな、nameさんは背はあるけど体重が軽そうだから、古い猟銃だと扱いづらいんじゃないの?」nameが銃を使うところをまだ見たことがない杉元も同意する。
「nameは細えからな、もっと食え。」とキロランケ。
「そうねえ……でも、慣れた銃のほうが、使いやすいから。」男3人の説得に、nameは苦笑いだ。

「大丈夫。nameは実力のある猟師だし、なによりnameの父の形見なんだから、大事にするべきだ。」

アシリパが加勢すると、「へへへ……そういうことで。」と、またもや苦笑するnameなのであった。


続いて一行は銃砲店の店主が教えてくれた札幌世界ホテルに来ていた。
白石はさっそく美人女将にキラキラした目を向けている。
「……節操無し。」と先日初対面で告白されたnameは鼻白む。
「気にするな、nameさん。こいつはこういう男だ。」杉元が言うと、
「言っとくけどオレ、付き合ったらすっごい一途なんだよ!?情熱的だよ!?ほんとだよ!?付き合ってみよう!?」と白石が必死で弁明しつつどさくさに紛れてnameの手を握る。
「あっ、家永さんが見てる!」とnameが明後日のほうを指すと、白石は「えっ、どこどこ!?!?」と、複雑な造りのホテルの中を走って行ってしまうのであった。
「ははっ。」nameが、嫣然と笑った。





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