dishs and books 3
おかしい。
自分の部屋に殺人犯がいる。
「メシ、誘ってくれたんでしょ。早くしてよ。」
あまつさえ、自分の手料理を要求している。
nameは内心盛大に混乱していた。
なんっ(なんで)、
わたしっ、
こここっ(こんなひと)、
家っ、
よばれっ(呼んでしまったのだろう)、
ころっ(殺される!)
ころっ(ころっと!……できればころっと!)
ごはっ(ごはん)、
つくつくつく(作らなきゃ)、
はやきゅ(言えてない)!!!!!
悲しいかな、nameは可愛げがないことに、混乱すればするほど言語中枢が麻痺して無口無表情になるたちであった。
下手に騒ぐと相手(手が鬼のように変形する謎の怪人殺人犯)の殺意をかったかもしれないので、それはそれで幸運とも言える。
それでも、最低限のコミュニケーションは取らなければならない。
「えー……(震えるな、わたしの手!)手を洗うなら洗面所はこちらです。しばらく時間がかかります。その間……えっと……新聞でもどうぞ。」
nameはそばにあった新聞を指差して言った。
「どーもありがと。」
殺人犯さんは律儀にお礼を言うと、ソファに座って新聞に手を伸ばした。
nameはキッチンに駆け込み、冷蔵庫の中身を確認して簡単なボロネーゼを作り始めた。スパゲッティを茹でる間に必死でソースを作る。
人間、土壇場に立つと何となく体が動くものなのね……と、玉ねぎを刻みながらnameは自分の気性を棚に上げて考える。嗚呼、目が痛い!
それでもなんとか20分で食事の準備を終え、食卓の準備を整えて、ソファに座ってこちらに背を向けている殺人犯どのに声をかける。
「あの、ごはん、できました……。」
声をかけるが、返事がない。
「あの……できました……よ……?」
声をかけながら近寄るが、彼はこちらに背を向けたまま微動だにしない。正確には、ページをめくる音がする。
(新聞ってそんなに面白いか?)
と思いながら脇に回って近づくと(背後から覗き込む勇気なんてない)、彼が読んでいたのはニーナが新聞の下に無造作に積んでいた漫画であった。
ソファの脇にしゃがみこんで殺人犯どのの顔を見上げながら、
「あのう……ごはんできましたよ……?」
勇気を振り絞ってもう一度声をかけるも、
……返事がな〜い。
(山●さんちのツ●ムくんか……!!)
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