_20091219 見果てぬ夢を考えていた。 「どうなさいまして」 見え透いた将来を考えていた。 「お気に召しませんでしたかしら」 普段は行きもしない海まで車を飛ばしてみた。 「それともお口に合いませんでしたかしら」 そうして昔話のように亀を助けて、こうして今、嘘のような現実を体感している。 隣でやたらと顔色を伺う女を、見たことはなかったが、確かに俺は知っていた。 「チョウザメの卵はおきらい?」 「いや、」 「エイヒレだってご用意してますのよ」 「いや、」 亀を助けて招待され、接待の中身は海鮮ばかりとは何ともおかしな話だ。 海の中も所詮、縦社会なのか。 「どうなさいまして」 「いや、そろそろ帰るよ。ありがとう」 「そうですの」 女は音もなく立ち上がり、泳ぐように襖の向こうに消えた。 戻ってきた際手にしていたあれを、見たことはなかったが、確かに俺は知っていた。 「ささやかですが、御礼の品ですわ」 強制的に受け取らされたそれに、帰った俺は、果たしてどうするだろうか。 女は笑っていたように思えた。 その先を見たことはなかったが、確かに俺は知っていた。 見果てぬ夢、見え透いた将来、そんなものを考えていた俺は、予想だにしなかった結末を見て、きっとそれに果てるのだろう。 玉手箱に果てる © 陽気なN |