タフィーの行方を誰も知らない。 「最近、タフィーを見ないよね」 ふと、誰かが口にした。 「タフィー?」 「そういえば」 誰かがそう返せば、また誰かが同意する。 「どうしたのかね」 「あら、マイケルも知らないの?」 マイケルはタフィーの恋人で、周知の間柄だった。 そのマイケルでさえ知らないらしいタフィーの行方に、話を出したマリアも首を傾げる。 「どうしたのかしら。タフィーってばおっちょこちょいだから、うっかり川にでも落ちてなければいいけど」 心配そうにすぐ傍を流れる川に目を遣るマリアに、マイケルは軽く笑った。 「まさか、違うよ。まあ、おっちょこちょいだからこそ、騙されてどこかに監禁でもされてるのかもな」 「あら、それこそ笑い事じゃないわ」 恋人である筈のマイケルの言い草に、マリアは少し憤慨して言い返す。 「まあ、大丈夫さ。タフィーにだって理由があるんだろ」 「そうかもしれないけど」 誰よりもタフィーを知るだろうマイケルの言葉に、マリアは渋々と同意した。 「ただいま」 普段と変わらない明るい声で、マイケルは帰宅した。 よしよしとベッドの上のペットを撫でて、上着をハンガーに掛ける。 「タフィーが見つからないってさ」 猿轡をくわえたペットを一瞥して、マイケルは、小さく笑った。 タフィーの行方を誰も知らない。 タフィーの行方 © 陽気なN |