02
ヴァリアーのアジトへ戻った頃には、もう陽は昇り、爽やかな風と小鳥の声。
今日もいい天気になるだろう。
新しい一日を告げる辺りの空気に似つかわしくない、返り血を浴びた自分の姿。
『(報告書…ボス、まだ寝てるよね…。)』
なんて言い訳をこしらえつつ、一服する為に、なまえは談話室に立ち寄った。
無駄に重量感のあるその扉を開けると、見慣れた顔ぶれ達が並んでいる。
「しししっ、なまえおはよ〜。」
『おはよう、ベル。今日は早いのね。』
「今回も、随分ハデに暴れたみたいだね。」
「お前はいつも、返り血浴び過ぎだぁ。」
『マーモン、スクアーロも、おはよう。いい天気だね。』
「あら、なまえ!お疲れ様。コーヒーでいいかしらん?」
『ルッス、ありがとう。』
ルッスーリアからコーヒーを受け取り、ソファーに沈む。
流石に眠たいな…と思いつつ、コーヒーを口に運んだ。
ふと、何か視線を感じた。
疑問に思い、眠たい顔を上げると、みんなの顔が見える。
血以外に何かついてる?と聞こうと口を開けようとすると、
「あら!?まぁまぁまぁ!なまえ!これどうしたの〜♪♪」
と、いつになく上機嫌なルッスーリアが、私の左手を取った。
『あ…(つけっぱなしだった…)』
取られた左手を見ると薬指に光る銀色の指輪。
少し大きめの隊服を着ているので、チラチラと見えるか見えない程度だったそれを、ルッスがガバッ!と引き出した。
「あらん。いつの間に、そんないい人が出来たのかしら?聞いてないわよ!」
嬉しそうなルッスーリア。
この手の話は彼女(?)の大好物だ。
ちょっと、面倒だなと思いながら、ルッスーリアの手によって思わぬ所でお披露目されてしまったその指輪を外し、首につけているチェーンに通した。
いつもは、首から下げているのだが、任務の時には、その存在を指に移していた銀色。
『昔の話よ。今は、いい人なんて居ないの。』
「あら?別れちゃったの?」
ルッスの問いかけと共に、立ち上がる。
『ううん。私が殺しちゃったの。暗殺者らしいでしょう?』
そう言い、クスリと笑う。
その行動とは裏腹に、なんだか鼻の奥がツンとした。
『私、ボスに報告してくる!』
なるべく、悟られないように笑顔を振り撒きながら、そそくさと私は談話室から逃げ出した。
「私、悪い事聞いちゃったのかしら…。」
「しししっ。好きな奴に手を掛けるって、こっえ〜。」
「んもう!ベルちゃん!はっ!もしかして、私と同じ趣味なのかしら!?」
「ルッス…それはないよ、きっと。さっさと売ってしまえばいいのに。僕ならそうするね。」
そんな言葉を耳にしながら、スクアーロは一部始終を黙って見つめていた。
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