01
今宵は満月。
こんな日は決まって胸がざわつく。
真っ暗な闇に輝く月光の下、
紅い鮮血が彩りを添える。
今日の任務は皆殺し。
疑惑の会合が開かれている小さな酒屋。
然程時間がかかることもなく、最後の一人に手を掛ける。
「ひぃっ。た、助けてくれ…」
『私の名前はなまえ。』
愛刀の薙刀を男の首に突き付ける。
「な、何言っ…」
『もう一度言うわ。私の名前はなまえ…。そう…呼んで…』
「な…なまえ…?」
『そう。よくできました。』
「ぐっ…カッ…」
また一つ紅い鮮血が、今夜一際の花を咲かせた。
『地獄で彼によろしく。』
死に行く男にそう伝え、なまえは薙刀を振り払う。
そうして、自身の左手薬指に光る銀色にそっと口付けを。
その後彼女は、決まって月を見上る―。
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