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窓から差し込む月の光を背に、なまえがスクアーロの方へと歩みを進める。


『スク、ありがとう。帰ろうか。』


「お゙…お゙ぉ。」


呆気に取られて、スクアーロは思わず返事が詰まってしまった。


待機させた車への道を、二人で歩く。


「ゔお゙ぉい、なまえ。…いいのかぁ?」


スクアーロが意を決してなまえに問いかけると、小さく笑いながら彼女がスクアーロの方へ振り返る。


『何がさ?』


「あ゙ぁ?何がって…」


『本当、おせっかいな鮫だね。』


「ゔるせぇ…。」


お前限定だ。と言う言葉を飲み込み、スクアーロが、数歩前を歩いているなまえの隣へと移動する。


『しっかり、お別れしたから、もういいの。』


そう言ったなまえに、夜風がそよそよとあたり、髪が靡く。


「……返事、聞いてもいいのかぁ?」


ずっと聞きたかったけれど聞けなかった言葉をスクアーロが口にする。
なまえがスクアーロを見ると、心なしか、彼の顔が赤いように感じた。

普段、余裕ぶったクールな表情からは想像できない彼に、つい悪戯心が擽られる。


『返事?なんの?』


「ゔお゙ぉい!」


『クスッ。嘘うそ。ごめんごめん。』


なまえが楽しそうに笑った。


『でも、言ったじゃない。私は、スクをそういう対象として見た事が無いって。』


そう言うと、なまえの肩にスクアーロの手が触れ、彼女のその歩みを止める。


なまえの瞳に映った銀白色が近い。

触れるだけのキスをされ、スクアーロの真剣な表情がなまえの視界を埋め尽くした。


「…今から見ろって言っただろぉ。」


『そう…だね。今から見てみようかなぁ。あ、車発見!』


「ゔお゙ぉい…」


『ぶはっ、何情けない顔してんのさ。』


必死なスクアーロになまえが堪え切れずに吹き出した。

あぁ、本当に、お前にかかっちゃ、俺もただの男だなとスクアーロが思っていると、急に襟元が引っ張られる。


『スク、これでも感謝しているんだよ。…背中押してくれてありがとう。』


なまえがそう言うと、上半身が傾いたスクアーロの頬に、優しい感触とリップ音。

彼が放心している間に、なまえは待機していた車に駆け寄り、隊員に出迎えられている。


「ったく…。馬鹿女がぁ。」


そう呟きながらも、顔が綻んでいるスクアーロが、ふと、振り返ると自分を照らす満月。




一途に死んだ奴を思い続けていたなまえが、急に心変わりなんてのも、難しい話かもしれない。
だが、今夜やっと終止符が打たれた。
それにもう、チェックメイト寸前だろぉ?
二人に与えられた時間は充分過ぎる程長い。俺は当たり前のようになまえとの時間を過ごして行ってやる。


「悪く思うなよぉ゙。」


月を見上げそう呟いたスクアーロの髪を夜風がキラキラと靡かせる。
月は変わらず優しい色で彼を照らしていた。


『スクアーロ!置いてくよ〜!』


「お゙〜。」


振り返り歩みを進めると、前に見えるのは愛しい人。



まだまだこれから。



二人の恋は始まったばかり―。







Fin!



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