08





ヴァリアーの談話室。


此処には、なんとなく幹部達が集い、各々自由に過ごしたり、お茶をしながら、会話をしてみたり、まったりと過ごす事が多い。

この日、スクアーロがやはり、なんとなくこの部屋に立ち寄ってみた所、暇そうな連中がウダウダと過ごしていた。

適当にソファーに腰を掛け、ルッスーリアが運んで来たコーヒーを嗜みつつ、新聞などを広げてみる。
暗殺者集団がこんなに平和でいいのだろうか…。
まぁ、暗殺者がここにいるって事は、平和な事なのだが。

そんな事をスクアーロは思いつつ、ふと、部屋を見渡した。


「なんだぁ?なまえは任務かぁ?」


「なまえなら、なんだか急に、うどんが食べたい!ビバ日本食!!とか言って、早朝から本部の方へ出掛けたみたいよ。」


「また訳のわからねぇ事を…。」


ルッスーリアの力が抜けるような返答にスクアーロはパサリと新聞を折り畳む。

ボンゴレ本部は、日本贔屓が多い。
掛け軸等が飾ってあったり、日本食にも富んでいる。
ボスの痛い視線を軽く無視して、たまになまえは本部へと足を運んでいた。

ヴァリアーで本部の連中と仲が良いのは、あいつくらいだと、スクアーロが一人で納得していると、ベルが彼に話し掛けてきた。


「なぁ、なまえの指輪の事なんだけど。」


「まあ!私も気になってたのよ〜。なんなのかしらねぇ?任務の時の…?」


「ムッ!何の事だい?」


するとルッスーリアも話に加わり、何事かとマーモンが尋ねた。

スクアーロと二人での任務後、単独の仕事ももちろんあるが、なまえは誰かと組まされる事も多くなった。
最初こそ抵抗を見せてはいたが、ボスに逆らえるわけもなく、最近は諦めたように合同任務を行っている。

しかし、任務後のあの行為は止めるつもりはないらしく、未だに続けられていた。
ベルとルッスーリアは、なまえとの任務を経験し、その異様な行動を気にしていた。
とは言え、気にはなっているが、スクアーロ同様、突っ込むに突っ込めない状態が続いている。


「マーモンは、まだなまえと組んだ事がなかったわねぇ。」


ルッスーリアがマーモンに事を説明する。
興味深そうにマーモンが耳を傾けた。


「ふうん。普段のなまえからは考えられないね。」


「そうなのよ。最初は私もびっくりしちゃったわ。でも、なんだか、聞きにくくって…。」


「なまえのくせに生意気だよな。」


3人のそんな会話を聞きながら、スクアーロは複雑だった。

自分だけが知っている特別な物の様に錯覚していたのに、結局、幹部に知れ渡っている。


「(あいつは、あまり人前で涙を見せねぇ奴だと思っていたがなぁ…。)」


スクアーロがそう考えていると、ルッスーリアが会話を続けた。


「兎に角、彼によろしくって言う"彼"って誰なのかしら?そう言って、すぐ何処かに消えちゃうのよね、あの子。先に帰ってろ!って…。」


「だから、元彼だろ?なまえが殺したとかいう。」


ベルがそう返答していると、スクアーロがルッスーリアの言葉に口を開いた。


「……?すぐに何処かへ行くだとぉ?」


「あら?スクの時は違ったの?ベルは?」


「王子の時もオカマと一緒!意味不明行動後、すぐ消える。」


その会話を聞き、涙を見せられたのは自分だけなのだと何処となく優越感を覚えたスクアーロが居た。
一瞬芽生えた、複雑だった感情が少し晴れる。


「スクアーロの時は違ったのかい?」


「俺の時も別に一緒…『たっだいまぁ〜!お土産パクってきたぁー!』


マーモンの質問に、スクアーロが答えようとしたが、彼の言葉に被せて、突然、談話室の扉が開き、話題の中心人物が両手一杯に荷物を抱え、戻って来た。


『寿司貰ったよ!あとは日本酒と〜♪』


なにやら、上機嫌で鼻歌交じりにテーブルの上にそれらを並べていくなまえ。


「おかえりなさい♪うどんはどうだったのん?」


ルッスーリアが問い掛ける。


『まだ食べてないの。皆で食べようと思って持って帰ってきちゃった!食べるでしょ?食べるよね!?』


半ば強制的になまえが言う。
目的の物を手に入れられたからか、終始彼女はご機嫌な様子だった。
ルッスーリアと軽い足取りで、その準備に取り掛かる。




談話室には、なんとなく幹部たちが集う。
だがしかし、最初はそんなこともなかった。せいぜい、幹部会議や各々の情報交換の時くらいだろうか。

なまえが美味しい物は、みんなで食べよう!だとか、新作ゲーム入手したから、みんなでやろう!だとか、何だか子供じみた事ばかりではあったが、そうやって人を呼び出し、強制的だったり、諦めだったり、集められる内に、自然に集まるようになってしまった。
今や全員、そうなっているという事は、満更でもないのだろう。

そうやって、人を集めてしまうなまえや、今みたいに笑顔を絶やさない彼女を見ていたら、任務の際の表情や、不可解な行動は彼等にとって、とても気になる事だった。





暫くして、出来上がったうどんを手に湯気をその笑顔に浴びながら戻って来たなまえが驚愕の声を上げる。


『すっ、寿司に牛乳…。』


「結構合うぜ?しししっ。」


『寿司には、日本茶!緑茶だよ〜!あ、はいマーモンうどん!』


「ムッ!なまえありがとう。」


「これがうどんなのねぇ。結構いけるわね♪」


『でしょでしょ♪スク、日本酒は?』


「明るい内から、酒はやめとくぜぇ…クソボスみてぇになっちまう。」


『あ、ボスにも後で持って行かなきゃ。レヴィ居ないね?ボスの所かな?』


「あいつは、ほっとけって〜しししっ。」


『あ!!マグロ!私のマグロ!!取るなーッ!』


「早いもの勝ち♪」


ワーワーと賑やかに始まった遅めの昼食会。

コーヒーしか入れていなかった、スクアーロの空っぽの胃袋に温かいうどんとやらが、流れこんで行った。








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