ドン・ボンゴレ




「――と、言うわけなんだ…。」


私に説明を滞りなく終えると、綱吉様はそう呟いて申し訳ないと頭を垂れる。

話を掻い摘んで説明をすると、ヴァリアーには私のような要員が一人も居ない事。
しかし、それでは大変だろうと、何人か人を送ってみたものの、大した成果は上げられず、と云うか成果を上げる前にヴァリアーの個性的な面々に音を上げて、送り込んで二・三日と持たず、本部へ出戻って来てしまう事。
今思えば、泣きながら愚痴を溢す人達を何人か見た覚えがある。そういう事だったのかと今更ながらに納得した。
まあ、その最後の砦となったのが私なのだが、綱吉様は、それは本部が困ると最後まで首を縦に振らなかったらしい。
そこで、綱吉様が出し惜しみをしている人材に珍しくザンザス様が興味を持たれたのか、彼はわざわざ独自に私の事を調べ上げたそうで。
今のこの形を作り上げてきた私を、これまた珍しく御気に召したのかどうかは分からないが、ただ一言「寄越せ」と綱吉様に電話をして来たらしい。
それで今日、二人の会談が行われて居たそうなのだが、綱吉様の説得はザンザス様に届く筈もなく、渋々と了承してしまったそうだ。


「これ以上は俺の命も危うくて…。」


中々折れない綱吉様に、ザンザス様お得意の憤怒の炎が唸り声を上げて彼の右手に集中した時、これはもう駄目だと悟られたらしい。
とは言え、ザンザス様に目を付けられてしまった時点で私の処遇などもう決まり切っていた事だろう。
それでも、ギリギリまで私を手放そうとしなかった綱吉様のお心が物凄く有難く嬉しいものだった。


『御顔をお上げ下さい、綱吉様。あのザンザス様をお相手にそこまで御健闘されただなんて、部下冥利に尽きます。』


「ハハッ…それでもこんな結果になっちゃって…。」


『今度は私が頑張る番です。戦闘要員にはなれませんが、綱吉様のその御命、しっかりと守らせて頂きます。』


そう努めて明るく振舞う。そんな私を見て、綱吉様も眉を寄せたまま笑顔を作られた。


「なまえさん、俺はね、あなたの事を部下だなんて思った事はありませんよ?」


『え?…それはどういう…。』


「大事な仲間…ううん、家族。ファミリーだと思ってる。凄く頼れるお姉さんって所かな?あなたが後ろにドンと構えて居てくれるだけで、ああ、大丈夫だ。と安心出来るんです。」


先程とは違って、綱吉様がふんわりとお日様のような優しい笑顔を作り出す。
その笑顔は不思議と人を惹き付ける力があり、私は彼から目が離せなくなる。


「だから、何かあったら直ぐに連絡して下さい。絶対に一人で抱え込む事だけはしないで、いつでも頼って来て下さいね!」


そう言い終えると、綱吉様は少し照れたようにはにかんだ。
9代目。貴方様が何故、10代目を綱吉様にされたのか今、分かった気が致します。
まるで陽だまりの様に全てを優しく包み込んでしまうようなこの御方は本当に貴方様とよく似ている。彼が居るならばこそ、ボンゴレも暫くは安泰ですね。

そんな事を考えながら、すっかり綱吉様に不安な気持ちを癒されてしまった私は、はい。と一言だけ、でもしっかりと返事をして、明日の準備へと陽だまりが溢れるその部屋を名残惜しく後にした。




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