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「な、なんだ!?」


髑髏の男がよろめきながら狼狽えていると、部下らしき一人の男が慌てた形相で地下室にやって来た。


「た、大変です!ヴァリアーが攻めてきました!」


「なにぃ!?クッ!どうなっていやがる!相手の数は!?」


「はい、6人です。」


「6人!?ハッ!舐めやがって。おい!お前はボスとこの女を連れてシェルターへ迎え。」


そう言い残して髑髏の男は様子を見にか、地上へと上がって行った。
オドオドした様子の男が近づいてくる。これは、チャンスかもしれない。

抱き起こされた瞬間に、その男目掛けて頭突きを喰らわす。
若干こちらも星が飛ぶ勢いだが、今はそんな事を言っている場合ではない。
素早く後ろ手に縛られたままの腕を縄跳びのように飛び越える。
身軽さには自信があるが、どうにも足も縛られたままなので、バランスを崩し転んでしまう。
しかし、それは想定内。狙いは、うずくまる男のホルスターに収められている拳銃。縛られたままでも、前にした手でそれを奪い取り………


「何をするつもりだ?」


私の指が拳銃触れたと同時に、それは遥か彼方へと飛んでいった。
反対にガチャリと銃口を向けられて、身動き一つ取れなくなる。
今頃は、私に銃口を向けるナナシファミリーのボスの頭を銃弾が突き抜けている予定だった。詰めが甘い。力量不足。こんな場面でも、ヴァリアー幹部の方々ならば華麗に優雅に切り抜けるだろうに、所詮は私は私。


「もう人質としての利用価値は無さそうだ。」


そう冷たく言い放たれた言葉。これまでの人生で私は何度、自分の無力加減に泣いてきただろうか。しかし、それも今日でおわりだ。
全てを諦めてしまった時、体中の力がゆるゆると抜けて行く。




……やっと、約束を果たせたばかりなのにな。

約束を覚えていたのが例え私だけだとしても、私はこの約束を胸に今まで頑張って来れた。
達成出来ないまま死ぬよりは、幾分も幸せなのかもしれない。

口の中は蹴られた時に噛んでしまったのか、鉄の味のまま気持ちが悪い。やられたお腹は我慢していたけれど、脱力したと共に痛みが増している。
しかし、この気持ち悪さも痛みもあと少しの事だ。
そうだ、死の世界へと旅立った時には、あの葬儀に出られなかった恩人のボスの元へ挨拶に行こう。

貴方のお陰で約束が守れましたと。







「……これで俺がなまえを守ってやってもいい。」


『ほんとう!?』


「あぁ、だからお前は、いつも俺の目に見える所にいろ。」


『いる!約束する!』






死を覚悟して目を瞑った私の脳裏に蘇るまだ幼い紅い瞳。

貴方の側にいられたのは、ほんの少しの間だったけれど、幼い日の思い出はずっと私を守ってくれたよ。

ありがとうね。




『ザ…ンく、ん…』





―パァンッ!




無機質な空間を突き破るように乾いた銃声の音が鳴り、それと共に悲痛なうめき声が部屋に響いた。





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