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『うっ…』


身体が重い。頭が痛い。何だか身体も冷たい…あぁ、またベッドから落ちちゃったのかな。





――――そんな訳が無い!

急に意識が覚醒していき、頭の痛みなんて無視して目を開ける。
手も動かしたつもりが、どうやら拘束されているようで、それは叶わなかった。
朦朧としたままの意識を懸命に引き摺り起す。駄目だ。焦ったら駄目。落ち着け。
自分に言い聞かせながら、大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出した。
目を覚ました時は、真っ暗で何も見えなかったけれど、徐々に目が慣れ、辺りを伺えるようになってくる。


『ここは――』


かつて、ナナシファミリーに所属していた頃の事を思い出す。
ここは、きっと地下だ。一度しか足を踏み入れた事は無いけれど、何も無い無機質でガラリとした雰囲気と、周りのコンクリートの壁を確認して、私はそう確信した。


『落ち着いて…まずは状況確認を…。』


一々、考えを言葉にするのは、朦朧とした意識をハッキリさせる為と、自分に言い聞かせる為。
もう二度と、出来る事をやらなかっただとか、詰めが甘いせいでなんて後悔はしたくない。
ひんやりとするコンクリートの床の上で身じろぐ。手は後ろ手に縛られていて、足首にもロープ。自分が今、何をするべきか懸命に頭を働かす。
周りの状況はどうなっているのだろうか…。もう、ヴァリアーや、ボンゴレに知られているだろうか?
ヴァリアーでは今頃、まぬけだと笑い飛ばされているかもしれない。
使えない奴はいらない。ヴァリアーの暗黙の了解である。


「充分利用価値はあるさ。いいように使ってやる。」


意識を失う前に聞いた男の言葉を思い出す。何をどう勘違いをしているのかは理解できないが、
ボンゴレという大マフィアの中で私の存在など、ちっぽけな物だ。取引きに使う程の主要人物でもなんでもない。
そうなると、ナナシファミリーがボンゴレに攻め入って今にも戦争が起こるかもしれない。そうなった時に自分に出来る事。今すぐ此処を抜けだして、ボンゴレ側として戦う事。

どうにかこの場から逃げ出さなければと、手の感覚が無くなる程に固く結ばれたロープの中で手首を回すと、ギチギチと肉が削がれるような感覚がした。
それでも必死にもがいていると、外から足音がした。

ギィッ…とコンクリートで出来た扉が開かれる。入り込んだ光の眩しさに、目が眩んだ。


「よお。お目ざめか?」


憎たらしい声。目を必死に凝らしながら入って来た人物を見上げる。


『どういうつもりよ!』


「お〜コワッ。ボスッ!目覚ましましたぜ。」


「なまえ久しぶりだな。」


慣れて来た目で二人の男を確認する。一人は、私をここへ連れて来た髑髏の男。
もう一人は、現ナナシファミリーのボス。


『もう二度とそのまぬけ面拝む事は無いと清々していたのに、残念だわ。』


「てめぇ!誰に口聞いていやがるっ!」


皮肉たっぷりに言ったその瞬間、怒鳴り声と共に、腹部に激痛が走る。見事に蹴りを喰らってしまい、ゴホゴホッとむせながらも、目の前の人物を睨み上げる。


「ケッ!相変わらず生意気なガキだぜ。」


『……はっきり言うわ。私はあんたが思っているような利用価値なんて全く無いわよ。』


そう私が吐き捨てると、目の前の二人は含み笑いでこう言った。


「それが、そうでもないんだぜぇ?」


『えっ…?』


「ボンゴレ9代目という御方は、どうやら、大変寛大なお方のようだよ。父同様、その甘さに吐き気がするがね。」


『………。』


「お前なんかの為に、ボンゴレを明け渡してくれるそうだよ。どう取入ったのかは知らないが、これで漸くファミリーに恩返しが出来たと言うわけだ。なあ、なまえ。」


…意味が分からない。9代目がどんなに温厚であろうと、ボンゴレを明け渡すなんてわけが無い。
しかも、それが私のこのちっぽけな命と引き換えだなんて万が一にもありえない。
仮に私がボスならば、そんな小娘の命等好きにしろと、謀反を起こしたナナシファミリーを潰しにかかる。……普通はそうだよね。私程の戦力なんて居ても居なくても変わらない。
だとすると、私の存在を過大評価し過ぎているこいつらへのただの時間稼ぎ。
ナナシファミリーの要求を即座に蹴っても、奴らはボンゴレに攻め入る準備は出来ているだろう。攻め入られて無駄な被害を出すよりは、時間を稼ぎボンゴレ側から精鋭を送り込む方が、被害は少なく済むはずだ。
こんな所で捕まったままでいるわけには、いかない。なんとか抜けださなければ。


そう、自分の考えがまとまった時、地下のこの部屋にも伝わる地響きと大きな爆発音が聞こえた。




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