04.それだけで充分だわ



ゴールデンウィーク2日目。家庭科部の部活は昨日で、今回は栄養面などを考慮した定食作り。お菓子ばっかり作ってる訳じゃないんだぞ!午前中に作り終え、その定食を昼食とし午後は良い時間まで課題をある程度進めておいた。最終日頑張れば終わるだろう。なので連休だやっほーい!残りの4日間ゴロゴロするぞー!ってなってるはずだったのに。はずだったのに…!!

「何で私は学校にいるんでしょうか…」

しかもこの暑い中!外で!!ジャージを着て!!ドリンクのボトルを洗っているんでしょうか!!
それは先日のテニス部部長の一言で始まった。




「ゴールデンウィークの間、マネージャーをやってくれない?」
「…は?」

何を言っているんだこの人は。隣にマネージャーがいるじゃないか。しかし良く見ると足に包帯を巻いている。話を聞くとマネージャーが一週間前、体育の時に足を怪我してしまったらしい。捻挫で全治2週間。ただ、ゴールデンウィーク中には他校との練習試合も組んでいてマネージャーが居ないと困るそうだ。部員がやればいいじゃないかと思ったが、せっかく部活を取れる時間が多いのに部員にマネージャー業をしてもらうと練習時間が減ってしまうから代理を探しているのか、と納得する。他に誰かいなかったいなかったのかと問うとほとんどが部活があるし、ただのファンの子にはやらせられない。部活に入っていない、もしくは活動日が少なく信用出来きて、暇そうな子がいないか探してたのだがなかなか見つからなく困っていたそうだ。とうとう休み前日になってしまってあきらめかけた所であの中庭事件が起きてちょうどいい、とこの話を持ちかけたらしい。どうせ暇でしょ?と幸村の笑顔が言っている。

「丸井と仁王と仲が良いなら大丈夫そうだし、この通り!頼む!」
「…ちなみに断るという選択肢は」
「あるわけないよね?」

幸村クンの笑顔はまぶしいぜ…!棒読みでがんばりまーすと言うとめちゃくちゃ部長さん喜んでいた。マネージャーさんにもめちゃくちゃ感謝された。幸村には当たり前だよねと言ってたけど。案外根にもつタイプだなこいつ。やってもいいが、初日は家庭科部の部活がある事を伝える。だが、当日いきなりマネージャーやれと言われても無理があるので2日目に1日マネージャーをやり仕事を覚えその次の日に練習試合が行われるらしい。え、一日で覚えるの?無理でしょと思ったが当日はドリンク作りやタオルを用意したり他校の出迎えなのでそんなに難しくはないらしい。すごくやる気はないが幸村には逆らえないので渋々承諾する事にした。

そして昼食を終えた今私は外の水道でドリンクボトルを洗っているのだ。この後先輩マネージャーに作り方を教えてもらう予定だ。歩く事は難しくないが激しい運動などは出来ないそうなので、座って出来るスコア付けなどはやってもらいドリンクの作り方やタオルの保管場所などは教えて貰った後私がやる事になっている。午前中の分は前日に作っておいて冷蔵庫で冷やしておくらしいので今日初のドリンク作りだ。洗い終わったボトルを籠に入れて部室に向かい先輩に声をかける。2人で部室に向かいスポーツドリンクの粉の分量を聞き、その通りに粉をどんどん入れて行く。面倒だからペットボトルでも買えば良いのにとぼやくと先輩がごめんねー、部費がそんな出てないからどうしても安上がりの粉になっちゃうんだよねーと眉を下げながら私が粉を入れたボトルに水を入れてくれる。ていうか先輩休んでてくださいよまじで。私が幸村に怒られる。そう言ったけど運動しなきゃ大丈夫だから気にしないでと言われた。女神かよこの人。仁王とか丸井だったら喜んでおしつけてくるのに。

「午前中から見てたけど、あの2人ほんと藤木ちゃんの事好きね」
「…え、あの2人って誰の事ですか?」
「丸井と仁王に決まってるじゃない」
「何言ってるんですか。そんな事ないです、あいつらは私をからかってるだけですよー」

もうすぐ休憩時間なのでタオルなども用意しなくては。喋りながら出来上がったドリンクを籠に入れて外に持って行く。外に出ると5月というのに日差しがきつい。そんな中皆良く部活出来るよなぁ。コートで打ち合いしている人達を見つめる。黄色いボールが行ったり来たりしていた。試合形式でやっているのでコートが使えない人は素振りや筋トレなどをしていて、その中でも目立つ赤髪はジャッカルとダブルスを組んで先輩と試合をしているようだ。

「ひゅーう!天才的ぃ!」

ボールがネットの上を転がり相手のコートへと落ちる。…いつもあんな自意識過剰な事言ってるんですか、と聞いたら苦笑いで返された。呆れた顔で見ていると丸井とばっちり目が合い、今の見た?見た?と言わんばかりのドヤ顔ウィンクでピースされた。丸井集中せんか!! 審判やってる真田に怒られてやんの。ざまあ。ふと前を向くと今度は筋トレしてる銀髪と目が合った。手をヒラヒラ振られるが柳生が真面目にやりたまえ!と怒っていたので手を振り返す事は叶わなかった。その光景が面白くて思わず笑うと、先輩からも笑い声が漏れる。

「ほら、やっぱり好かれてるじゃない」
「…否定出来ないっス」





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