■十月十三日


沢田が応接室を後にしたのと入れ違いに、赤ん坊がやって来た。

「ヒバリ、お前明日のパーティーには来れんのか」
持参したエスプレッソ珈琲を口にしながら、赤ん坊は僕に問いかけた。
「パーティー?何それ」
今日一日うっすらと重い空気を抱えていた沢田からは、そんな話しは聞いていない。
僕が返事をすると、赤ん坊は少し驚いたように目を見開いた(様な気がした)が、すぐに口元にニヒルな笑いを浮かべた。
「そういや、ツナの奴ここんとこやけに暗いと思ったが・・・お前ら喧嘩でもしてんのか?」
・・・喧嘩でもできれば苦労はしないのかも知れない。
正直、ここ最近の沢田は何を考えているのか分からない時がある。
二人でいてもよく話すし機嫌も悪い訳ではない。楽しいことがあれば笑顔も見せる。
だがやはり、何かが違うのだ。近くにいるのに遠い。僕との間に線を引こうとしている様に見える。
赤ん坊は質問を無視された事も気に留めなかった様子で、邪魔したな、と言い残し帰って行った。



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