■九月十九日


登校日が週に三日しかないというのは、ひどい話だと思う。
しかも、今の日本は月曜日の祭日が実に多すぎる。沢田と二人で昼食を摂ることができるのは月曜だけなのだ。連休を増やすなど、旅行会社の陰謀以外有り得ないではないか。
ぶつぶつ文句を言いながら机に向かっていると、コンコンと控えめなノックの音が聞こえた。
風紀委員のものではない。彼らのノックは、もっと無骨な音だ。
「誰」
「・・・沢田です」
戸惑いがちな声に、心臓がどくんと跳ねる。
慌てて声の方に向かい扉を開けると、沢田が青い包みを一つ抱えて立っていた。
「どうしたの?」
予想外の訪問に驚いて尋ねたが、沢田は困ったように眉を寄せたまま俯いていた。
沢田、と声をかければ、上目遣いに僕を見てまた視線を泳がす。
「・・・月曜日、お弁当屋さん休みだって言ってたじゃないですか」
「うん」
「もしもヒバリさんお仕事だったら、お昼どうするのかなって・・・」
「・・・持って来てくれたんだ」
コクリと頷く沢田を、目を細めて見つめた。
もしかしたら居なかったかもしれない僕を心配してわざわざ来てくれたことが、素直に嬉しい。
「ありがとう。君も一緒に食べていける?」
「いえ・・・渡したらすぐ帰って来るように言われてて」
そう言って包みを手渡すのかと思いきや、沢田は一向に動こうとしない。しかもうううと変な声を発している。
「沢田?」
不審に思って声をかけると、突然凄い勢いで包みを差し出し、
「御免なさい、おいしくないかも!」
と叫んで走り去ってしまった。
謎の行動に呆けていたが、気を取り直してソファーに座り包みを開けた。

中にはいつもとは明らかに違う、いびつな形のおにぎりが二つ。

僕は暫くそれをじっと見つめていたが、やがて押さえ切れなくなってくつくつと笑い出した。
沢田が逃げたのは正解だったかも知れない。
そうでなければ、僕は今頃あの子を羽交い絞めにして、無茶苦茶にキスをしていただろうから。






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