そっか、と飲み物を口に含む未来に、ちょっとちょうだいとねだる雪。
未来は雪に飲み物を渡した後、後ろに続く一同に尋ねてみた。


「で、次はどこに行く?」
「お、あれなんてどうだ!?」


うきうきと目の前を指さした山本に、ようやく目の輝きを取り戻した未来は再びその輝きを失ってしまった。


「……お……お化け……屋敷?」
「ねぇ山本知ってる? 世の中にお化け屋敷が嫌いな人いるの知ってる?」
「そそそs、そうだよ武それに幽霊なんて非科学的なもの信じない信じない信じない怖くないよ何言ってるの別に僕は怖いとか言ってないしくぁwせdrftgyふじこlp。」
「う゛おぉおい!! 未来が壊れたぞぉ!!」
「……俺の妹がついにインターネットスラングを口で言うように……」


がやがやと煩い集団を無視し、リボーンは暫くお化け屋敷を見つめた後、言う。


「……いーじゃねぇかお化け屋敷。入るぞ。」


未来の死亡宣告が鳴り響いた。


「いやー、入ってみたら意外と楽しいかもしれねーぞ?」


山本の相変わらず気楽で気楽な言葉に未来はもはや肩を落とすしか術がなかった。


「未来、せめて一緒に回ろ?」
「雪ぃ! 大好き!!」


涙ながらに雪に飛びつく未来に、まんざらでもなさそうにそれを受け止める雪。
そんな百合的光景にもはや見慣れ過ぎてしまった一同はそのまま素通りし、二人を置いて先に行こうとさえ考えていた。

だが入ろうとしたその時、店員に呼びとめられる。


「す、すみません……此処は少人数のために造られたものでして……」


どうやら流石に15人は多すぎたようだ。
それを気にするでもなく、リボーンはじゃあ、と提案を述べる。


「大体8人なら入るだろ。じゃあテキトーに組め。」
「……8人じゃあまり出るよリボー」
「うるせぇ組め」


リボーンの横暴さにそろそろ慣れた一同は、普通に組み分けを始める。
暫く考えていた雪は、ふと提案する。


「んじゃあボンゴレファミリーならちょうど8人じゃんね」
「……ん? ……えーっと……にーしーろー……あ、本当だ。雪天才」
「えへへー……ってそんな大げさな」


それを聞いた他のグループたちもじゃあ各々所属している仲間同士で組むように話し始めた。
そろそろうずうずし始めていた山本は、それを見ながらも口を開く。


「俺ら決まったし先行っていーか?」
「あぁ。決まったやつから先行っていーぞ」


リボーンより許可を受けたボンゴレ軍は、一気に空気が上下に分かれた。
勿論テンションが上がったのが山本率いるチャレンジャー軍、テンションが下がったのが未来や雪率いるガクブル軍だ。
恐る恐る中に入ってみればあたりは真っ暗。職業柄暗闇に慣れている雪や未来も、妙に緊張を覚えてしまい体を固くさせている。そのせいかあたりが全く見えていないのだ。


「真っ暗だなー…」
「手探りで行かなきゃいけないのかな?」
「そうみたいですね……10代目! 俺がライターであたりを灯しますよ!」


なんかそれはそれで危ないな、と呟きながら渋々お願いする綱吉。
カチッ、と軽い音がしてあたりが一気に明るくなった。

これでようやく未来も見えるようになったが、どうやら恐怖で何も見たくないらしい。
気付けばいつの間にか獄寺の背中にひっついて歩いている。


「………っててめぇ、なんか重いと思ったらテメェかよ!! 離れろ!!」
「やだっ。気付かない隼人が悪いばーかばーか」
「果たすぞ引っぺがすぞ置いてくぞ」
「ごめんってば!!」
「一回も謝ってなかったじゃねぇか!!」


普通ならこういうやりとりで恐怖感も和らぐというものだが、声が反響する場所でかえって未来の恐怖心をあおってしまったようだ。
ちなみに雲雀、骸、綱吉、クロームは完全無視ですたすた先に進んでいるらしい。
勿論その間にも脅かし役が脅かそうと頑張っているが、どうやら会話に夢中になっているらしい綱吉はすぐには驚かず、通り過ぎたあとで「えっ、今なんかいなかった!?」と遅れて驚いている。残りの三人は言わずもがな、驚くはずもない。

そんな四人から少し離れたところで、残りの四人はのろのろと進んでいた。主に未来のせいで。


「ったくいい加減離れろ!」
「べ、別に怖くないよ? ただ隼人が怖いんじゃないかなーって心配してあげてるだけじゃん人の優しさを無下にするもんじゃないよ別に幽霊怖い助けてとか、幽霊に取りつかれるとか、SADAKO出るとか、そんなこと塵とも考えてないよ? 怖くないって言ってんじゃん煩いなぁ?」
「…おい」
「ははっ、未来は怖がりなのなー」


誰もが言いたくて言えなかったことを、軽々と言いのけた山本は相変わらず天然が抜けてないが、獄寺にとっては少しだけ山本に対しての好感度が良い方に上がったようだ。
ちなみに綱吉たちはもう既に結構前を進んでいるので、ライターの火はもうほとんど届いてないはずだ。それでも進んでいるということは流石にとっくに目が慣れてしまったのだろうか。
獄寺は早く綱吉を追いかけたいが、未来がシャツを引っ張っていて重くてうまく動けない。

そしてその時……


「ぎゃぁああああ!!!」
「うるせぇ!!」


ライターの火が突如消えたのだ。
獄寺はもしやと思い上下に振ってみるが、まだオイルは残っている。
だがどう点けようとしても点かないのだ。


「……っかしいなぁ……壊れたか?」
「呪いだ絶対呪いだ呪われた隼人のせいで呪われただから入りたくないって言ったのにぃいいい!!!」
「だからっるっせーっつの!」

「獄寺くーん?」


もう既に綱吉の声が遠い。
どれくらい距離が離れているのだろうか。
それすら、この暗闇の空間では見えない。


「すぐに行きま……」
「天井が落ちてきたぁああ!!」


獄寺の返答は、未来の意味不明な悲鳴によってかき消された。
響き渡る轟音。

獄寺いわく、ついに未来が怒り狂って壁に追突したかと思ったんだそうだ。

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