「ついに未来が狂いましたかね?」
「はっきり言うね君」


前を臆することなくずんずん進んでいた綱吉たちは一度立ち止まって後ろを振り返る。
だが、随分後ろにいるのか、ライターの光はもう見えなかった。
先に進みすぎたかな…、と考えながらも綱吉は周りの三人にとりあえず進もう、と声をかける。この暗闇の中ではぐれたなら、外に出てから合流したほうがいいと考えたからだろう。


「……ボス」
「ん、どうしたのクローム?」


三人の男子が振りかえれば、そこには自分の拳を胸元にあげ、少し眉を寄せたクロームの姿があった。


「……とても……静か……」
「……え?」
「……いきなり大人しくなったね、あの草食動物」


その雲雀の言葉でようやく骸も綱吉も気がついたようだ。
そして進めていた歩を止め、すぐに後ろを振り返る。

だが、待てども待てども気配は感じない。
まるで、最初から4人しかいなかったかのように……。


「……ビビりすぎて、入口まで戻っていったのでは?」
「……あ、あり得る……。とりあえず外に出て待ってようか?」
「そうだね……群れたくないし」


さっきから雲雀の機嫌が悪かったのはやはり群れているせいらしい。
一同は綱吉の案に同意し、とりあえず先に進もう、と足を進めた。


一方……


「天井が落ちてきた! 落ちてきたよ隼ちゃん!!」
「誰が隼ちゃんだ、果たすぞテメェ!」
「ははっ、隼ちゃんって可愛いな!」
「山本言っちゃダメ」


一言で言うとカオスだ。


「っていうか、明るくなったね?」


雪の言葉に、未来さえも一旦大人しくなってあたりを見回した。
壁には少しの間隔で蝋燭が並べられており、その炎は怪しげにゆれる。
自らの踊る影を見つめ、未来は再びコアラのように獄寺にひっつくことになった。


「ってか10代目! 10代目ー!?」


反響する獄寺の声。
それに答える声は……なかった。


「……おかしいよ。気配感じない」
「そんなに先行ってねーはずなのな」


皆が首をかしげる中、唯一獄寺の背中にひっついていた未来はだから言ったじゃん! と息巻く。
全員が未来の方を向けば、未来は説明を始めた。


「うー! うー! うー! 未来嘘ついてない! 天井が落ちてきた! うー! うー!!」
「いや、うみねこはいらねぇからちゃんと説明しろ」
「ちっ。いや、だからさぁ……隼人のライターが消えてすぐ、轟音がしたじゃん」


そう言えば、と顔を見合わせる山本と雪。
唯一獄寺は、お前が狂って壁に激突したんじゃねーの? と聞いたが、違うもん! と未来に怒られた。


「あれ、天井が落ちてきた音。何らかの仕組み? になってたのか知らないけど、もともと行くべき道はあっち」


未来は四人の真横の壁を指さす。


「そしてこんな道、さっきは存在しなかった。」


そのまま指を移動させ、四人の目の前の道を指さした。

そして分かった? と三人に尋ねる。
それでも三人は少し混乱しているようだった。
確かに、いきなりそんなことを説明されても戸惑うだろう。何より、天井が動き出しチームを二股の道に進ませるギミックなど、ただの遊園地にしては手が込みすぎている。


「……じゃあどうするの?」
「……どうするって前に進むしかねーだろうが。そういう演出なんじゃねーの?」
「そうかなぁ……」


雪納得いかなそうだったが、ここでとどまっても意味ないので先へ進むことに同意した。
未来も不思議な演出に一周回って落ち着いたのか、相変わらず獄寺のシャツを握ってはいるがひっつくことはなくなったようだ。
先頭にいた雪が一歩足を踏み出す、その直前……


<ようこそ、お化け屋敷の秘密の部屋へ……>
「捻りないね!」


思わず未来がツッコむが、それどころじゃない。
声の主がどこにいるのか分からないのだ。
あたりにはアナウンス用のマイクなど見当たらない。


<こっちこっち>


雪が後ろを向く。そして小さくいた、と呟いた。
それにつられ三人も振り向く。

そこにいたのは、黒髪に青い瞳の…男子。
おそらく年は雪たちとそう変わらないだろう。
白のシャツに白のズボンという服装をしていて、そこから覗く四肢はかなり白く華奢だった。


「…誰?」
<この部屋の案内人です>
「案内人この野郎」


未来が意味不明な言葉を吐き捨てるが、雪が知りたいのはそれじゃない。


「じゃなくて名前なのな」
「有難う山本」


その質問に案内人は暫く考えるそぶりを見せた後、笑みを浮かべた。


<では、シオンと名乗っておきましょう>
「何そのまだ謎めいてる答え」
「では? ではって何!?」
「てめぇふざけてるとはっ倒すぞ!!」


山本以外がその答えに騒ぎ出す。
唯一山本だけは、天然を発動させ、面白ぇやつだなー、とのほほんと笑っていた。


<ここではたくさんの人が飢え死にしています>
「さらっと恐ろしいこと言ったのな!」


相変わらず笑顔の山本だが、流石にツッコまずにはいられないらしい。


<貴方達も早くしないと、ここで死にますよ…>
「じゃあどうしろって?」
<迷路をクリアしてください>


獄寺は懐から無言でダイナマイトを取りだした。
それを一応宥める未来。


「それだけ?」
「案外簡単そうなのな!」
「っていうか、案内人って言っといて案内してくれないの?」


ごもっともな雪の意見に、シオンは再び考え込む。
そして輝かんばかりの笑顔を此方に向けた。


<案内人っていうか説明者ですね>


未来は無言で刀を召喚した。

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