入ファミリー

「……で、お前はいったい何者なんだ」


そうリボーンが切り上げる。
風が吹き付ける屋上では、計四人と一人の赤ん坊が佇んでいた。

そのうちの一人、未来は日陰に隠れながら風になびく髪を押さえつけ、明後日の方向を見つめている。
だがその他の全員が、一様に未来を見つめていた。


「っつーかリボーンさん! なんでこいつがここにいるんですか!」
「サボるのは久しぶりなのなー」


へらっと笑う山本を指差す獄寺の顔には悔しさが映っていた。
それほど山本を仲間と認めるのが悔しいのだろう。
それでも獄寺のライバルと称する山本は、ニコニコと笑みを浮かべたまま動じない。


「うだうだ言うんじゃねぇ獄寺。山本は入ファミリー試験を合格した、立派なファミリーの一員だ」
「ぐっ……で、ですが」


ふと未来が視線を下げリボーンを見つめる。
リボーンも、そんな未来の視線に気づき未来を見上げた。
しばし見つめ合いの間が続く。
あまりに気まずすぎて、綱吉が我慢できず声をかけてしまうほどの長い間だった。


「……あ、あの、二人とも……?」
「リボーンって……ひょっとして、9代目が言ってた殺し屋の?」
「お前、9代目と面識があるのか。その通りだぞ」
「僕はあれだよ、ほら、蒼いペテン師さんです」


まるでどこかの掲示板のハンドルネームのような名前を述べた瞬間、リボーンの反応が変わる。
少し考えるそぶりを見せた後、もう一度じっくりと未来を見つめた。
未来もそれに嫌な顔一つ見せず、小さく笑みを見せた。


「成程な。お前が、9代目が拾ったっつー奴か。でもなんでまた日本に来たんだ?」
「9代目から、ボンゴレ10代目候補であるサワダ ツナヨシに会いに行けっていう命令が来たんだ」
「つまり左遷か?」
「言わないでよ!」


いきなり饒舌になった未来に、綱吉や獄寺はおろか、山本すら驚きを隠せないでいた。
とりあえず今のところ彼らにとっての未来の第一印象は定まった頃合いだろうか。
それでも未来は気にすることなく、だけど少しだけ恥ずかしそうにこう続ける。


「とにかく! 僕はそこにいるボンゴレ10代目候補に会いに行けって言われたの。それ以外の指示はされていないし、帰還命令も出ていない……から、しばらくはここで過ごす」
「え、で、でも家とかは……」
「今は買える家を探してるところ。その気になれば公園でもどこでも寝れるし、別に構わない」
「か、買う!? こんな学生が?」


なんでもないように未来は頷く。
大体こんな学生がマフィアに足を突っ込んでること自体がおかしいのに、今どきこんな学生がマンションの一室を購入したところで左程ツッコミどころはないはずだ。
保護者の印などは、いつだって偽造出来る。勿論犯罪だ。


「本題がずれてるけど、とりあえず僕はマフィア関連者だからそのつもりで」
「待てよテメェ……」


教室の時のように、獄寺は一歩前に出る。
それも綱吉を庇うように。
それを未来は、再び無表情のない顔で見つめる。
教室の中の雰囲気再びである。


「10代目に手出しするつもりじゃねぇだろうなぁ……」
「そんなことするわけないでしょ。10代目候補に手だすことがどれだけ重大なこと僕も分かってるよ。 仮にもボンゴレ第5幹部を任されていたわけだしね」
「なっ……」


当然のように未来は述べるが、その一言に獄寺は固まる。
それはつまり、ボンゴレ内では未来のほうが獄寺より立場が上だということになる。

もっとも、そう言いだした途端未来はその場にしゃがみ込み、膝を抱えて丸くなる。
唐突過ぎる様子の変化に、綱吉は青ざめながら声をかける。


「ど、どうしたの未来……!?」
「……まぁ、その立場も、100人を超える部下も、管理下にあった3つのカジノも、日本に来ると同時になくしたんだけどね……」
「やっぱり左遷じゃねーか」
「違うもん! 9代目は僕のために、未来のボンゴレ10代目に仕えるほうがいいと判断してくださったんだ!」


そういうと同時に未来は勢いよく立ち上がった。
そして僅かにおびえている綱吉の肩を掴み、しっかりと握る。
顔は至って真剣の真顔だ。


「だから僕は、あなたはをボンゴレ10代目にしてみせる。僕をあなたのファミリーに入れてください。きっと役に立ってみせます」


そういうとどこぞのプロポーズらしく、未来は膝をつく。
それは忠誠の証だ。

獄寺の忠誠の誓い方よりよほど形になっている未来を見て、綱吉は血の気が引く思いだ。


「ま、待って、俺はマフィアになんてならないって!」
「10代目」


そう鋭い声が、未来の口から洩れる。
鋭く細められたその瞳は、見ようによっては殺気を灯しているようにも見えた。


「……僕の、生活が懸かっているんです」


心の中で悲鳴をあげる綱吉。
だけど未来は塵とも容赦しない。


「……分かってくれますね?」
「…………は、はい……」


そうして、未来はめでたく綱吉のファミリーに入ることになったのだ。

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