04


「エルザ、僕らどうしたらいいんだろう」
「私は無理よ。だって浮いてるもの」
「わかってるよ、じゃなくって女の子の誘い方を教えて欲しいの!」


頭を抱えて叫ぶハリーに私はカラカラと笑う。
あんな小さかった子がもうこんなに大きくなって、女の子について悩むなんて、私も歳をとったなぁなんてしみじみ感じる。
それにハリーたち、代表選手は1番最初に踊るだろう。
それでパートナーがいないなんて哀れすぎる。
まだ気になっている女の子にすぐ声をかけに行ったネビルの方がよっぽど男らしい。

私が生暖かい目で見てるのに気づいたハリーは、また頭をガシガシと掻きむしった。
跡ができるからやめなさいと言い、その様子が可哀想だから、アドバイスをしてあげよう。


「ハリー、ただ一緒にパーティーに行かないか?とか、パートナーになってくれないか?って言うだけでいいのよ」
「それが出来たら苦労しないよ。それにもうみんなパートナーが決まってるんだ。どうやって探せばいいの」
「パチルはあなたから声をかけられるのを待ってたわよ」


これはハーマイオニー情報だけどね。
流石に女の子の思いを言うのは憚ったけど、このままハリーが一人ぼっちになるよりはいい。
ロンについては自分で頑張れって思うけど。


「ハーマイオニー本当に綺麗ね」


絶対に会場で1番輝いているのは彼女だろう。
フヨフヨと浮き、いちご味の飴玉を舐めながら、会場の雰囲気を楽しむ。
みんながダンスに夢中になっている間に、色んな料理もつまんでお腹いっぱいだ。
セブルスはどこだろうと探しに行くと、腹いせなのか、イチャイチャするカップルを見つけては、どんどん減点をしていく。
眉間のシワが怖い。


「セブルスも生徒から誘われてたのに」


ものすごく嫌そうな顔でバッサリと切ったセブルスは鬼だ。
あの女の子、可愛いかったのに男の趣味が趣味が悪すぎる。
そう思ったけど自分もだったと思い直す。
訂正、あの子は趣味がいい。


「本当にどうしようね」


私のことを探しているのは、マクゴナガル先生から聞いた。
ただえさえ試合の準備やら、警備やらで忙しいのにも関わらず、空いた時間で私を探す姿を見て、マクゴナガル先生は彼が倒れそうなのが心配だと言った。
私もセブルスが心配だ。
彼が倒れる前に会いに行こう。
身体も最近、かなりの回数で戻ってるおかげか傷も癒えている。
あとはリハビリを頑張るだけだ。


「もうちょっと待って」


すぐにでも会いに行くから、そう思っていたのに。
嫌な予感がして最終試合に臨むハリーについて行ったら、変なところに飛ばされた。
状況が分からないまま、セドリックは死にハリーがピーターに捕まった。
そして、ヴォルデモートが復活した。


「ハリー少し待って、必ず助けるから。私の存在を気取られてはだめよ」


ハリーへそう囁き、私はゆっくりと彼から離れる。
前回、私が見えていないのに呪文を跳ね返したということは、ヴォルデモートは呪文の存在を直感で感じ取っているのだろう。
今私が魔法を使えば、一瞬でバレる。
まだヴォルデモートに私が生きていることを気づかせてはダメだ。
魔法を使わずに殺そう。


「さあお辞儀をするのだ!」


決闘をさせようとするヴォルデモートは今、ハリーに夢中だ。
その杖から呪文をかけた瞬間、私は彼の心臓にナイフを突き刺す。
しかし彼はナイフが突き刺さったまま、決闘を続ける。
ナイフの存在に気づいていないようだ。


「ハリー」


私はその場から去り、押され気味のハリーの元へ行く。
ハリー、大丈夫よ、大丈夫だからと。


「「エルザ」」
「リリー!ジェームズ!」


腕に触れた瞬間に見える2人。
ハリーを助けに現れた彼らは、私の記憶にあるままだ。


「ごめんなさい!私あなたたちを...」
「ハリーのことずっと守ってくれて、ありがとうエルザ。ずっと辛い思いをさせたわ」
「リリー...」


私たちの力が合わさった魔法はどんどん大きくなって、今度はヴォルデモートが押されていく。
しかし彼は諦めようとしない。
私が刺した傷口から血が落ちるのにも意を返さず、ただただまっすぐハリーを見つめていた。


「ごめんハリー、エルザ。もう僕ら持ちそうにない。合図をするから、ハリーは優勝杯をエルザはセドリックを呼び寄せるんだ」


そう言うジェームズに私は叫ぶ。
ハリーをまた置いてくのかと。


「大丈夫よ、エルザ」


そう微笑むリリーには、昔と変わらない優しさがあった。


「愛してるハリー。エルザ、本当にありがとう」
「愛してるわハリー。エルザも大好きよ」
「「せーの!」」


そして気づいた時、私は聖マンゴにいた。
ヴォルデモートは生きている。
私は奴を殺し損ねたのだ。
その事実が、私の心臓を大きく締め付けた。


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