「うーん」

12月に入った頃、私は頭を悩ませていることがあった。それは、12月末ごろにあるクリスマスについてだ。あんな家には帰りたくない私はクリスマス休暇を残ることに決めていたが、問題はリリー先輩とセブルス先輩へのプレゼントだ。あれからもっと仲良くなった2人に喜んでくれるものをあげたい。あとはたまにお菓子をくれるダンブルドア先生にへも忘れないようにしないと。私はカタログを手に自室でペラペラとページをめくる。正直彼らにどう言ったものを送れば良いのか分からない。セブルス先輩の仲が良い人に聞こうとも数少ない彼らは、1年生の私からしたら話しかけるなんて怖すぎる。リリー先輩に至ってはグリフィンドールだ。そちらの方がハードルが高い。私は最近癖になりつつあるため息をついた。
とりあえず、図書館へ行こう。こんなとこではいい案が浮かばない。途中でリリー先輩に会えばセブルス先輩への、セブルス先輩に会えばリリー先輩へのプレゼントをどうするか聞けばいい。私は談話室に向かう階段を上りながら考えた。

「おい」
「なんでしょうか先輩方」
「ちょっとこい、話がある」

寮を出ようとした時、声をかけてきたのはスリザリンの先輩たち。つい最近まで私に暴力をくれた人たちだ。そんな人たちに呑気について行くほど私もバカではない。

「ここでお話しできないことならばお断りします」
「なっ!お前最近スネイプと仲がいいからって調子にのるなよ!」
「貴族の恥のくせによう!」

私はまだリリー先輩とセブルス先輩以外に本当に仲がいい人はいないから友達の数も以前となんな変わりない。それに同級生と少しづつ喋るようにはなったけれど、コミュニケーション能力の自信がない。言いたい放題の人たちに打ち勝つ力など持ち合わせていなかった。私はただ2人へのクリスマスプレゼントを考えようと外に出ただけなのに。なんでこんな人たちに絡まれなくちゃいけないんだ。

「おい!聞いてるのか!」

1人の先輩が杖を私に向ける。それに伴い、私も杖を抜いた。寮生全員がこちらの様子を眺めている。場は一触即発だった。

「流石に1年生へ杖を向けるのは...」
「今まで散々こいつ殴ってたんだから変わんねーよ。
ステューピファイ!」
「プロテゴ!」

上級生が放った魔法をとっさに防ぐ。セブルス先輩に守りの呪文を教えてもらって正解だった。ちなみに攻撃に使える呪文も彼からならった。リリー先輩は私が攻撃的な魔法を学ぶのにいい顔をしなかったけど、自分の身を守るためだ。仕方がないと許してほしい。
1年生私が守護魔法を使えることに驚いたのか、みんな驚いたままこちらを凝視していた。仕返しをする絶好のチャンスを私が逃すはずがない。

「インカーセラス」

杖を向けた先輩をしばりあげる。そうすると他の先輩たちもこちらへ杖を向ける。あぁ悪意が痛い。なんで私がこいつらにいじめられなきゃいけないのだ。こいつらに殴られた身体は未だに傷だらけなのに、どうして私だけ。

「アクアメンティ!」

杖の先から勢いよく水を出す。その勢いに揉まれて彼らは吹き飛んで行った。壁にぶち当たり、痛そうにしているが、水はそのままだし続ける。縛り上げた先輩がやめてくれと叫んだ。お断りだ。

「金輪際、私に手を出さないと誓えますか」
「うっ分かった!分かったから、死んじまうよ!」
「誓えますか?」
「誓う!誓うから!」

杖を振り、出していた水を消す。先輩たちが苦しそうにむせているが気にせず立ち去る。これ以上関わり合いを持つのはごめんだ。

「ブロウズ!後悔するぞ、お前のような半端者をあの方が認めるわけがない!」

苦し紛れに絞り出した言葉、それに反応してしまった私はとっさに足が出た。こっちは何度もやられてる。1度くらいいいだろうと思いっきり相手の顔を蹴り上げた。上手に鼻面に入り、奴は気絶して周りの取り巻きどもが焦っている。いい気味だ。私は自分で自分の暴力的な部分に驚いていたが、この状況に酔いしれていた。

「さようなら先輩」

そのまま彼らを置いて、図書館へ向かう。これ以上ここにいたらおかしくなりそうだ。私はなるべく早足でその場を立ち去った。
クリスマス休暇前の図書館、人がまだらのおかげで私のひどい顔を見られなくてすんだ。図書館の奥の方、誰も来ないような場所に座り適当に取った読みもしない本を読む。

「アリア!」
「セブルス先輩...」
「エイブリーたちに聞いた。
助けられなくてすまなかった」

セブルス先輩はそう言うと私の横に座る。大丈夫だと首を振ると、先輩はぎこちない様子で頭を撫でてくれた。
涙がポロポロ落ちていく。

「ねぇ先輩もあの人に仕えたいの?」
「.............」
「私よくわかんないよ。マグルとか純血とかなんでもいいじゃん。
だってマグルのリリー先輩はあんなに優しいし頭もいいよ。けどあいつら純血なのに意地悪するし、頭だってよくないのに」

セブルス先輩は黙って私の話を聞いている。先輩があの人と繋がる悪いと言う先輩たちと話しているところを何度も見たことがある。先輩もあの人たちと同じなのだろうか。闇の魔術を使うよくない人たち。隣で私に寄り添うこの優しい人が、そうであって欲しくないと私は願った。

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自分にもたれかかりスヤスヤと眠るアリアに浮かんだ涙をそっと拭う。あの人に仕えたいかと彼女は僕に問いを投げかけたが、僕はあまりそこを考えていなかった。たしかに自分は闇の魔術に魅入られている自覚はあるけれど、それがあの人のためかと言われれば違うと思った。だって僕はリリーに認められたいと思って、闇の魔術を勉強し始めたのだ。

「アリア、お前はすごいな」

最近は上の卒業していった人たちに、特にルシウスに死喰い人になるように誘われていた。卒業したらすぐにあの人に仕えよと言われている。それをアリアはどうでもいいと言った。マグルも純血も関係がないと。僕は心がスッと軽くなった気がした。

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「アリア!またいじめられたら言うのよ!」
「リリー先輩大丈夫だよ。だってもう私弱くないもん!
それよりもクリスマスプレゼント楽しみにしててね」
「んもうアリアったら可愛いんだから」

クリスマスにお家へ帰るリリー先輩とハグをする。セブルス先輩がそれを微笑みながら見ている。先輩も!と言って私はセブルス先輩も巻き込んでハグをした。3人でぎゅっと固まると外でもとても暖かく感じだ。

「また今度ね」
「うん!」
「リリー、気をつけて」
「えぇ」

去っていくリリー先輩を見て、セブルス先輩に少し寂しいねと言う。そうすると彼は優しく頭を撫でてくれた。




クリスマス当日、わくわくしていた私はいつも起きる時間よりも1時間以上も早く目が覚めてしまった。パジャマのまま私は自分へのプレゼントを確認する。数は少ないが、セブルス先輩やリリー先輩以外にも、ダンブルドア校長や最近仲良くなった子たちからもプレゼントが来ていて、私は胸があったかくなった。そうだ。たしかに理不尽な理由で、ブロウズ家だからといって私に悪意を持って接してくる人もいるけれど、私にこんなに暖かくしてくれる人がちゃんといるのだ。昔とは違う、自信が持てる。ホグワーツに入ってよかったとこの時私は初めて感じた。


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