俺はお前で、 | ナノ

僕と君は、 第07話
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とりあえず僕は転入次の日から忍足君とことあるごとに関わって行った。
クラスが違うのに引っ付き虫みたいに。小さい頃僕が友哉にくっ付いて行動した時のことが思い出されてなんだか懐かしいけど複雑な気分になった。
だから目立っちゃったのかな。目立つことが目的だったけれど。
でもここまでの被害を受けちゃうとなると驚くよね。

「………うわー…何て言うデジャヴなん。」

「やぁ、忍足君。今日は君から僕に会いに来てくれたね嬉しいですよ。
でも一つ訂正させて下さい、僕が君に会ったときは君は気を失ってましたから。僕は意識ありますから。」

僕は忍足君と二回目に出会った場所、階段の踊り場に無様にも倒れているのだ。
こうなるのは簡単だった。ただ上から突き落とされただけ。うん。簡単すぎる。けど顔は覚えているよ。よく僕にちょっかいをかけてくる輩筆頭の彼だよね。

「いや、ちゃうし。会いに来たんとちゃうし。ただの通行人やし。」

「忍足君ってばそう言う人だったんですか。鬼ー、冷徹感ー、人でなしー、ろくでなしー、メガネー。」

「メガネを悪口と使わんといてくれるか。自分もメガネやろ。それにこれ伊達やから。」

「あ、伊達なんですかそれ。」

「せやで。じゃ、そう言う事で。」

話を強制的に終わらせた忍足君は僕の前から姿を消そうとした。
ちょっと待ってよ。せめて保健室まで連れて行ってはくれないのかな。

「待ってください。せめて保健室まで連れて行ってくれませんか?」

「…目ぇ付けられるで。」

「今更でしょう。」

僕は忍足君と言う名のタクシーを拾い保健室までたどり着いた。
それから備品を僕の手の届く所まで集めてもらってそれから手当を始めた。
てきぱきとそつなくこなす。
その間ピンセットが瓶にあたる音や包帯を巻く音で保健室は占められていた。そんな中以外にも忍足君が静寂を破った。

「…なんで、自分は俺に付きまとって来るんや。俺は初日に言ったやん。関わるな言うて。跡部からも言われとるんやろ?」

「うん、確かに言われましたし跡部会長からは命令されました。
けど、自分の行動は自分で決めるべきだと思いませんか?それに僕のやっていることは僕のエゴであり自己満足です。」

「巻き込むな言うたやん。」

「言いましたね。でも僕はエゴは巻き込んでなんぼって思っていますよ。巻き込まれるのは遠慮しますけど。」

「おい。」

「だから忍足君も本気で嫌ならこうやって僕のお願いなんて無視して過ごしていいんですよ。僕を居ないものだと思って過ごせばいいのに。」

「………。」

「それでも僕を無視しないという事は貴方自身この現状をどうにかしたいと思ってるでしょう。
少なくとも僕はこの境遇に居ていい気持ちはしないですね。」

「知ったかせんといてくれるか?ふ――「不愉快なんだけど。って忍足君は言います?」

「なんや自分柳か。」

「柳?」

「立海大付属中学の柳蓮二や。さっきの自分みたいに人のセリフを横取りするように事の顛末を予想できるような奴や。何でも知っとるんちゃう?データテニスしとるやつやし。」

立海大付属…確か神奈川の学校のはず。忍足君が知っているという事はそれほど能力に特化した人なのか。
その上データを集めていると聞くと乾君を思い出す。確か彼もデータを集めていた…そうだ。友哉の事をその柳君に聞いてみようかな。乾君とは…青学とはあまり関わりたくないし、友哉は有名だから柳君の耳にも届いているはずだし。
あ、今はそんなこと思っている時ではないかな。忍足君と会話してるし。

「へぇ、柳君ですか…いつか会いに行くことにします。僕も聞いてみたいことがありますし。
僕はデータなんてもの知りませんよ。勿論柳君って言う人も知りません。ただ君の言いたいと思ったことがわかるのは僕と貴方が似ているから。」

「へ?似てる?」

「はい、これは僕の勝手な思い込みだと思ってくださればいいです。気持ちのいい話ではありませんから。
貴方が僕に似ていると思った理由は僕の価値観を分かってくれたからです。たったそれだけの根拠ですよ。僕は嬉しかったんです。僕の考えは他の人に語れば語る程奇妙な目をその人は向けてきました。気持ち悪がって僕から距離を置きました。それは仕方ない事だって分かっています。ただ一人友哉だけは離れていきませんでしたけど。
そう言う事もあって忍足君が僕の考えに同意してくださったので似ていると思った次第ですよ。後、忍足君が仰った言葉僕も過去に友哉に言い放っていますから。」

「…俺が言った言葉?」

「はい。心当たりがないなら心当たりがないでいいです。その方が都合がいいですから。」

「すまんが俺は自分の事よう分らへん。
似てるだけで俺を助けようとするとか、エゴだからとか。どうも俺はエゴっちゅー単語を使って自分は誤魔化しとる気がするんや。」

おっと鋭い。
友哉みたいなヒーローになりたいって言うちょっとした邪念がばれちゃったかな。
でも似てるから助けたいって思う気持ちは偽りじゃないよ。
自分が虐められている現場を客観的に見せられてちょっと不愉快だからって動機が無いわけでもないけど。

「…分からなくていいですよ。こんな僕みたいな人間。理解するだけ無駄です。」

「………さよか。やけど、今思ったお前は俺と似とるかもしれん。」

「そうですか。それは、それはですね…。
ではそのあなたと似ているであろう人間からのお願いです。跡部会長達テニス部の方々をどこかに集めて話し合い、しましょう?」

「…自分話し合い嫌いやったやん。」

「嗚呼嬉しい。そんなことまで覚えてくださっていたのですか。そうですよ話し合いなんて解決するためにある様なものではありません。お互いに溝を深めるだけです。
ですので訂正です。僕達の言葉だけ聞いていただきましょう。」

僕は多分微笑んだ。


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