俺はお前で、 | ナノ

僕と君は、 第04話
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職員室で教師から色々聞いた。
僕のクラスだとか、学校の特色だとか。つまらなかった。
クラスはオシタリ君とは違うらしい。生徒会長、失態を犯したね。本来なら気にも留めなかっただろうオシタリ君について君が意識化したのだから。
今日はもう校内を散策しろとのこと。確かにもう一時間目は始まっているし、今更教室に行くのもおかしな話だろう。明日から正式に僕はここの生徒になるらしい。

教師の指示に従って校内を歩く。
とにかく広い。普通の学校がプレハブ小屋に感じてしまいそうである。
何より嬉しいのは図書館があるところ。読書は好きだ。夢中になれる。一時だけでもこの世界から逃れることが出来たという気持ちになることが出来る。
それから目ぼしい設備は…と、
闊歩して中庭に行った僕はそこでベンチに横になっている生徒を見つけた。誰だろう。
仰向けになって片腕が顔の上に持ってこられていて表情が見えない。
誰だとかは予想はついているけれど。

「誰や。」

仰向けに寝ていた彼が起き上がり僕を見据えた。
黒髪の様で紺色がかったような不思議な髪色の彼は丸い眼鏡をかけておりとても整った顔の男子生徒だった。
なによりも印象的だったのは心を閉ざし何にも興味を示していない様な目。
なんだろう。この気持ち。率直に乱暴な言い方をしたら…そう、ムカつくんだ。

「あぁ、すみません。中庭に人が居るとは思わなかったので。
僕は今日から…明日から正式にここの学校の生徒になる者です。君がこの学校で初めて僕の意思で会う事の出来た人です。初めまして、よろしくどうぞ。貴方の名前を聞いてもいいですか?」

とりあえず万人受けするであろう笑顔を向けた。
笑顔を向けられて無下にする人間なんかいないだろうから彼もとりあえず差し障りのない返答をしてくれるはずだ。

「…さよか。
俺の名前は忍足侑士や。忍ぶ足と書いて忍足。けったいな名前やろ。」

笑っているのだろうが笑っていない。
社交辞令としても初対面には笑顔を見せておくべきだろう。この忍足君の考えていることがいまいち分らない。

「君が忍足君ですか。さっき生徒会長から話を簡単に聞きましたよ。」

「……なんや。もう跡部の息がかかった生徒かいな。」

僕がそう言ったら忍足君は絶対零度な表情を僕に向けた。
まぁそれ相応な反応なのだろう。

「息がかかった?失礼ですね。僕はただ単にその跡部会長から忍足侑士とは関わるな、って言われただけなのだけですよ。」

「ほー、そうか。なら話は早いな。俺と関わらんといてくれ。」

「何故?」

「理由とか言う必要性あるん?」

「ありますよ?僕は人の口から明確な理由を聞かないと行動したくない人なんです。」

「…自分、鬱陶しいで。」

「でしょうね。もう自覚していますよ。」

自覚しているよ。自分が鬱陶しい性格をしているだなんて。
理解したうえでやっているよこの態度。この態度って人を簡単にムカつかせることが出来るんだよね。
僕一人だけがムカつくのってなんだか損な気分じゃない?

「関わんな言うたら関わんなや。」

忍足君は吐き捨てる様に言って僕から離れて行った。
ふむ、去って行く忍足君の姿を見る限りでは僕と同じかな。
僕と同じ、昔の僕と同じ境遇に立っているね。彼は、虐めにあっている。

何だろうね。ムカつくと同時になんだかもやもやする。
気分が悪いなこの気持ち。胸糞悪い。
僕は色々しなくちゃいけないことがあると言うのにまたやらなくちゃいけないことが増えてしまったな。
まぁ、今回やるべきことは簡単に済みそうだけれど。…手っ取り早く跡部会長から聞き出した方が早いか。

僕は行動は早い方だと自負している。
自分自身の性格は全て理解していると思う。ジョハリの窓の盲点の窓も未知の窓も無いよ。誰も理解してくれないから自分で全てを理解したんだ。

そう言えば僕が生徒会室に行ったときは既に一時間目が始まってたと思うけど、跡部会長は居た。…聞くだけ野暮ってやつかな。どうせまともな返答は帰ってこないだろうから。

「跡部会長、いらっしゃいますか?」

僕は早速生徒会室へと出向いた。まさか一日に二度もここを訪れることになろうとは、

「アーン?誰だ。」

尊大な声が中から聞こえた。
どうやら予想通り跡部会長はここに滞在していたらしい。

「先ほどお邪魔した転入生です。」

「…あぁ、入れ。」

僕が許可を受け、教室の中へ入った。

「失礼します。」

「今度は何の用だ?転入生。」

先ほど訪れた時と同じように跡部会長は机に向かい膨大な量の書類を片付けていた。
それは本来なら教師の仕事だと思うがその辺りは僕の知った事ではない。一介の生徒がそれに携わったところで意味を成さないのだから気にするだけ無駄だと思う。

「簡単なことです。先ほどおっしゃった忍足侑士の事について知りたくて尋ねに来ました。」


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