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「―――――――――――……。」
此処は何処だ。
黄泉の国?
いや、違う。ここは…。
「……ぇ…あ!?気が付かれましたか?今先生を呼んできますね。」
ふと横を見るとそこには僕に繋がれてある点滴の薬液が底をついたから交換しに来た看護師の姿がある。
彼女は僕が意識を取り戻したことに一瞬驚いたが、すぐに適切な対応をとってくれた。直ぐに先生、つまりは医者がここに来るらしい。
「…はい。」
嗚呼、此処は病院だ。
僕は死ぬことが出来なかったのか。
それからすぐ医者が来た。
簡単な問診。精密検査は散々今までやってきたらしい。脳に異常は全く見られなかったらしい。奇跡と言われた。
僕にとっては悪夢でしかない。
母さんも来た。
仕事場から駆け付けたらしい。
これだけ聞いていればとてもいい母親なのだろう。
でも、彼女は僕を愛している訳ではない。僕の生活態度、優等生態度、それを愛しているのだ。きっと僕が友哉の様に一般世間体から見れば不良と言うものになってしまったらすぐに縁を切ってくるだろう。そう言う母親なのだ。
…そうだ。友哉。
「母さん。」
「何かしら?」
「友哉は…?」
「…友哉君とは縁を切って頂戴。あんな子、貴方の為になる人間じゃないわ。前々から思っていたのよ。ご近所付き合いで何も言わなかったけれど、この際だから丁度いいわ。あんな不良と二度と関わらないでね?風格を疑われるわ。
そう、退院したら学校は氷帝学園に編入しましょうね?あんな腐った学園になんて行かせないわよ。」
「……はい。」
話を聞くとここは僕の住んでいた地域からかなり離れている病院らしい。
きっと母親が友哉との縁を切る為に転院したのだろう。それから学校も青学ではなく氷帝学園。あんな学園の方が腐っていると思うんだけど。金持ちの子度が考えていることなんてろくなことが無いと僕は思うんだ。
転入…友哉もどこかの学校に行ったのだろうか?きっとどこかの学校に飛ばされているだろう。少なくても氷帝じゃない。公立でも無いだろう。探す?…そう、しようか。
僕が意識を取り戻さなかった間どんなことが起きたのか。そして今、どんなことが起こっているのかそれを調べる事から始めよう。それから、それから、
やることはいくらでもある。
そして僕は退院した。
退院時には身体機能に問題は見られない。また、精神面でも問題は見られなかったようだ。僕は歪んでいるだけで精神的には異常ではないらしい。
いやだね。こんな不適合者でも異常無しと言われて社会に放り出されるわけか。
犯罪がなくならないわけだ。
退院して僕は編入試験を受けた。氷帝学園ともあって少々苦戦したが、結構な余裕を持って合格することが出来、僕は氷帝学園の一生徒になった。
編入初日、僕は職員室に行くなりすぐに生徒会室に通された。まずはこの学園の生徒会長に挨拶をしてから職員室に来いと言われた。
なんでもこれから会う生徒会長がここまで氷帝学園を立派な学園にしたらしい。なんていらないことをした生徒会長だ。
「失礼します。」
「アーン?入れ。」
僕はドアを控えめにノックして声をかけた。
そうしたら中からふてぶてしい声が聞こえてきた。
許可が出たところで僕はドアを開ける。それから入るとそこは教室…生徒会室とも言えない内装。強いて言うなら校長室をさらに豪華にした感じだ。なにこれ社長室?
その社長室には内装の中で一番豪華な椅子に座ってふんぞり返っている生徒がいた。きっと彼がこの学園の生徒会長なのだろう。
「お初にお目にかかります。本日より氷帝学園に転入―――。」
「片っ苦しい挨拶は要らねぇ。お前のことは書類で知っている。まぁ、詳しいことまではプライバシーの侵害になっちまうから調べはしなかったが…青学からこの時期に、ねぇ…。」
人が挨拶をわざわざしているというのにこの生徒会長は人のセリフを遮って尊大な態度をとって、これが王者の風格とでも言いたいのだろうか。反吐が出る。初対面からこのような態度を見せてくるこの人とはきっと仲良くはなれないだろう。いや、そもそもなる気は無いのだけれど。
さっさと職員室でこの学園の概要について説明を受けていた方がよっぽど有意義だ。
「…そうですか。ではこれで失礼します。まだ職員室で説明を受けてませんから。」
僕はそう思って生徒会長に背を向けドアに手をかけた。
「待て。」
「まだ何か?」
「3年H組の忍足侑士。」
「…は?」
「そいつには関わるんじゃねーぞ。」
「…何故?」
「理由を聞かなくとも民が王の命令には従うものだと思わないか?」
「……そうですね。善処しておきますよ。王様。」
僕は生徒会長の発言に対し雑に扱いそれからすぐに職員室に向かった。
オシタリユウシ?わざわざ発言しなくてもいいのに。同じクラスでなければ関わることだってしなかったのに。
人間は抑制されたらその抑制に対して反抗してしまいたくなることをあの王は知らないのか?
まぁ、いいや。気になるから秘密裏に関わってみようと思う。
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