俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第17話
(17/23) 

「――って俺は最近笑う様になったらしいぜ?亜久津どう思う?」

「ぁあ?知るかよ。テメェの顔面に張り付けたような笑顔なんてな。」

夜の街で久しぶりに亜久津と出会った。
友哉は姿を見つけ声をかけて会話をする。

「つれねぇなぁ。まぁ、俺自身?吹っ切れたかもって思ってんだが、どう思う?」

「吹っ切れた?バカ言ってんじゃねー…吹っ切れたなら、なんでこうやって倒してるやつらの数が昨日、いや…その前よりも多くなってんだ?」

多くなってんだ?と亜久津は友哉の足元に転がっている数十人の一人の頭を小突いた。

「アハハハハー、なんでだろうねぇ?」

笑う友哉の表情はぎこちなく、しかし仁王達に見せるものと同じようなものだった。

「テメェが知らねぇのに俺が知るわけねぇだろ。」

「アハーッ、そうだね!でも俺にも分からないなぁ?
……なぁ亜久津ー…俺、こいつ等のからなんて呼ばれてっか知ってっか?
破壊神、血塗れた喧嘩人形、殺戮人形、暗夜狼鬼、地獄図絵製作者、って…凄くねぇ?たった一人の俺にこんなにも異名があるんだぜ?だったらこの名前に沿う様に俺は喧嘩をするべきだよなぁ。」

「守本…テメェはいつからそんなのになった。」

「いつって…初めからじゃね?
いやー、この生活も楽しいぜ。昼と夜と、俺のキャラが変わるっつーの?夜はギラギラする感じ?昼にはねぇ感覚がすんだよ。
それに異名をさぁ呼ばれると…なんだろ、スゥってする感じ?どうやってこいつをのめしてやろうとか。そんな感じ。んあー、イイ感じ?」

「…そんなことばっかしてっと痛い目見るぞ。」

「ハァ?見ねぇし、俺最強だから!かかってくる奴全員フルボッコで終り。」

「ハッ、どうだか。」

「んだ?やってみっか?」

「ざけんなダリィ…。」

「つまんねぇ奴だなぁ。じゃ、俺行くわ。他にも居そうだしなぁ…どこ行ったら会えっかな?やっぱわざわざ東京まで出てこずに神奈川でも結構居んのかな?」

「知るかよ。テメェ足元掬われんじゃねーよ。」

「ハ、何回同じこと言わすんだよ。」

「…つるんでるやつが居んだろ。」

「あぁ、居るさ。それが?」

「そいつと縁切っとけよ。」

「は?なんで。」

「テメェは今までつるんできたのが舎弟だけだっただろう。
今回は違うんだろうが、別に俺は一般人を巻き込んだってどうも思わねぇが、テメェは嫌なんだろうが。
テメェは一般人とつるむには危険すぎる存在だってことにいい加減気付け。」

「俺が、危険?ハッ、今更。当たり前だろ。そんなのとっくの昔にあいつらは知ってるぜ?何せ、噂が蔓延ってんだからよ。」

「テメェはそう思っててもそいつらはどう思ってんのか、分かんねぇだろうが。
人質にされたとき、テメェはどうすんだよ。」

「あー…まぁ、確かにそれは面倒くせぇ。良し、じゃぁ縁切るわ。」

「…………。」

「助言サンキュ、亜久津クン!」

友哉は早々に亜久津を残してこの場を去った。
亜久津は転がって居る奴の人数を数えて呟いた。


「―――嗚呼、化物だ。」



亜久津の助言を持って友哉はテニス部部室へと意気揚々と向かって行う。
喧嘩の邪魔になってしまう枷は全て外してしまおうと言う考えだ。
放課後の部活が始まる直前に友哉はタイミングよく入ることが出来た。

「あぁ、俺の友達の友哉じゃないか。珍しいね。君から俺に会いに来てくれるなんて、」
「あ!友哉さん、もしかして俺を舎弟にしてくれに!?」
「む、なんだ?自ら教えに来てくれたのか?それは嬉しいな。」
「なんじゃ?もう放課後ぜよー。それとも新しいサボり場でも見つけたんか?」
「よう!守本!!なんか菓子くれに来たのか!?」
「イヤ、違ぇだろ。だろ?守本?」
「服装を正してもらいたいのですか?それならばお安い御用です。」
「まったく柳生に頼らなければ一人で正すことも出来んのか!たるんどる!!」

様々な反応をしてくれたテニス部レギュラー陣。
しかし、その発言の中には友哉がこれから言い放つ言葉を予想しているものなんて無かった。
いや、予想など出来ないだろう。

「いやぁ、俺、お前らと縁切りに来ただけだから。」

「「「「……………は?」」」」

たっぷり間を開けて反応したメンバー。

「じゃ、そう言う事で!俺、お前らが話しかけてきてもシカトすっから。じゃ!」

「え、ちょっ待ちんしゃい!!」

友哉は仁王が言う言葉を最後まで聞かずに部室を飛び出した。
これでいいだろう。
元々本当に友達だったかすら分からないような関係だったし、
はっきり言えば向こうも嫌な思いをしてこちらに関わらなくなってくれる。

「よし、これでOK!」


そしてその瞬間から友哉はテニス部を総シカトした。
いや、簡単なことだ。もともと挨拶ぐらいの仲だったし、真田や柳生との関わりはこちらが反応しなかったらそれ以上言葉をかけてこなかったし、睨んでやれば少し躊躇する素振りを見せていた。
サボり仲間でよく話をしていた仁王とはサボる場所を変えれば自然と話さなくなる。

とても簡単な事だった。
しかし、簡単ということは、その分欠点があると言う事で、
この時はまだ、予想していなかった。

簡単なことだと、思っていた。


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