(16/23)
「着いて来んじゃねーよ。」
「や、の…だって、俺、何か気に障ること…。」
「あぁ、気に障ったね。俺は、舎弟なんて、要らねぇ。」
「っでも俺は!!友哉さんの舎弟になりたいんすよ!」
「テメェの気持ちなんざ知らねぇ。俺は、要らねぇっつってんだ。失せろ。」
「っ…。」
今にも泣き出しそうな赤也。
少々言い過ぎてしまっただろうか?
いや、しかしそれが友哉の本心であって、言いすぎだなんてことは無いはず。
しかし、切原赤也と言う名前、どこかで…。
あ、
「お前…もしかして、テニス部か?」
話を大きく転換させ、赤也の機嫌取りと舎弟にしてほしいと言った用件を忘れさせてしまおうという作戦に出た。
「あ!知ってます!?俺、これでもエースなんすよ!」
「知らねぇよ。ジャッカルから聞いたんだよ。」
「もうジャッカル先輩と知り合いだったなんて!!」
「つーかテメェ以外のやつと知り合ってっし、お前が一番遅ぇよ。」
「えー!なんかショックっす…。」
「フン、じゃぁそう言う事で。」
別の事でショックを受けている赤也を確認し、友哉は今こそ逃走のチャンスだと確信した。
「あ、待って下さいっす!!俺を舎弟に!」
「チッ、しねぇつってんだろ!?」
どうやら意識の中にその用件はあったようで友哉が去ろうとした瞬間もう一度同じセリフを叫んだ。
友哉は速攻で断り赤也から逃げた。
赤也は二年。友哉は三年。
クラス自体も離れているから会わないだろう。
と言うよりも会わない様に友哉が気を付ければ会うことは無いだろうと思った。
無いだろうと思っていた。
思っていたのだが、
物凄い勢いで会う。
いや、待ち伏せされていると言った方が正しいのか?
屋上に行ったら居る。
中庭に行っても居る。
使われていない教室に行っても居る。
人通りのない階段に行っても居る。
あっちに行ってもこっちに行ってもどっちに行ってもそっちに行っても何故か居る。
「ストォオオカァアアか貴様はぁああ!!」
「失礼っすよ!俺は友哉さんの舎弟っす!!」
「ただし自称である。ピヨ。」
友哉は屋上と見せかけて中庭に見せかけ、使われていない教室だと思わせて、やっぱり屋上という様に移動して仁王しかいないだろうとたかを括っていたのだが、
銀髪以外の黒髪のワカメっぽい髪も存在した。
「お前、なんなんだよなんなんだよ!もうキモいを通り越して怖いわ!!
俺は舎弟なんていらねぇし、お前を舎弟なんて認めた覚えはない!!」
「いーや、俺は諦めませんよ!俺は宣言したことは実行するっすよ!!」
「しなくていい!!」
「友哉ー、残念ながらこいつは言ったことはしつこくするぜよー。未だに三強を倒すことが目的じゃー。」
「うわぁ…俺が関わりたくない奴ベスト3…。」
「しかし一番関わっとる奴らでもある。プリ。」
「そうなんだよなぁ…。」
「今んとこどうなんじゃ?折れたかの?」
「いんや、全然諦めてくれねぇの。
真田は未だに追って来るし、勿論柳生もだけどよぉ…。幸村も友達だつって何かとちょっかいかけて来るし、柳なんて…いきなり現れては変な確率唱えてどっか行くしよ…。テニス部はまともな奴居ねぇのかよ!」
「俺、まともっすよ!!」
「ねーよ!!
まぁ、丸井は時々お菓子くれっつって…あ、ガムいるか?丸井用に買ってんだ。」
「サンキュじゃ。」
「ジャッカルだけは俺の良心だ…。」
「まー、そうじゃのぅ…ジャッカルだけは常識こさえとるのぉ…。」
「俺だって常識持ってるっすよぉお!!」
「ハハハハハ、寝言は寝て言ってくれ。」
「寝言じゃないっすよ!!本気っすよ!仁王先輩も何か言って下さいっすよー!!」
「ちょう待っとれ、可愛い可愛い後輩の常識がある証拠を思い出してやるぜよ。」
「あざーす!」
「んー、入学早々三強に喧嘩売ったんは常識…いやいや違うのぉ。ラフプレイ…いんや、これも違うのぉ。
俺の変装に騙される…あぁ、これは赤也の失態じゃったか。そうじゃのぉ…。」
「わぁあああ!!仁王先輩止めて下さいっす!」
「プピーナ。」
褒めるどころか赤也の失態ばかりをつらつら述べる仁王。
その顔はとてもえげつなく、とてもいい顔をしていた。
赤也は慌てて仁王の口を閉じさせた。
「アハハハハハハハハ!!なんだよお前いっこも常識ねぇじゃん!」
「違ッありますって!!もー!仁王先輩のバカ!キチク!!」
「すまんのぉ。俺、詐欺師じゃけぇ。」
「関係ないっすよね!?」
「アハハハハアハハッハハハ!!!なんなんだよ、漫才かよ。アハハハハ!!」
「なんじゃぁ…友哉、よう笑うようになったのぉ。」
「…あ?」
仁王がフと笑いながら発した。
「俺はいっつも笑ってると思うけど?」
「それも最近じゃけ。
俺はようつるんどるけぇ知っとるけど、おまん…初めて会った時なんて通夜みとぅな顔しとったぜよ。」
「…通夜って……。」
「なんかしょっとる様な感じじゃ。」
「………。」
確かにあの頃はまだまだ幼馴染にことから抜け出すことの出来ていなかった時期である。
今も抜け出せてはいないが、あの頃よりはましになったと言う事なのだろう。
「仁王先輩!何言ってんすか!友哉さんは背負ってますよー、関東のトップとして!!ね!友哉さん!!」
「あ?…あぁ。」
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