俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第18話
(18/23) 

♪〜

「ん?」

夜、街を徘徊していたら不意に友哉のケータイが鳴った。
今日はまだ誰とも喧嘩をしていない。
と言うか、珍しく同類を見つけていない。

そして着信は誰からだろうと思って見て見ると非通知設定。
友哉は別段気にすることなく通話ボタンを押した。

「もしもーし?」

『よぉ、俺の事覚えてますかぁ?』

人を馬鹿にしたような口調で友哉に語りかけてきた電話越しの誰か。
一体誰だと言うのか。
立海生ではない。だって教えていないし、

「………は?誰だテメェ。知られてぇなら非通知で電話かけてくるんじゃねぇタコ。」

『ぁあ?青学の舎弟の事も覚えてねぇってか?ざけんなよ。』

青学、と電話の向こうの奴は言った。
そして舎弟とも言った。そしてかすかに覚えのある声。
思い立つ人物はただ一人。

「…テメェ……あいつを虐めたやつか。」

『せーかいせーかい。お久しぶりっすねぇ、兄貴ぃ…。』

「で、なんの様なんだよ。俺はテメェみてぇなクズの電話相手するほど暇じゃねぇんだよ。」

『はぁあ?そんな態度取っていいと思ってる訳か?ククク、はっらイテェ。』

「なんだ?腹でも下したか?」

『そう言う意味じゃねぇよバーカ。』

「ぁあ?」

『―――……――………。』

友哉が荒々しく返事をしてその後向こう側からの声が遠くなった。
雑音交じりになって、しかしながらも向こうの奴らは何やら話し合っている。
ここで分かったことが一つ。相手は単独ではなく、複数で居る事。

「なに言ってんだよ。聞こえねぇよ。話すつもりねぇなら切るぞ。」

一向に返事のないことに苛立ちを覚えた友哉が喧嘩腰に訴えてみた。
それからすぐに返事はあった。
ただ、信じたくない声だったわけだけれど、

『……友哉、かの?』

息も絶え絶えの仁王が電話越しに言葉を発していた。

「仁、王!?な、んで……!?」

『来んでええ、来んでええから俺は平気じゃッガハ、ァ!!』

「仁王!?仁王!!おい、仁王!!!」

最後は腹部を殴られて声が詰まったように聞こえる。
直ぐに仁王の声は聞こえなくなってしまったが、咽る声といらないことを言うなという言葉が聞こえた。

『よう、聞こえたか?アンタの友達の仁王クンの声がさぁ。
もー、要らないこと言うから一発浴びせることになっちまったじゃねーか。』

「…………。」

友哉は全て把握した。
青学の元舎弟が自分に復讐しようとしていること。
その為に今そいつの元には自分を恨んでいる輩が全員集結していること。きっと今街が静かなのはそのせいだろう。
そして人質として仁王が拘束でもされていると言う事。


しかし、友哉は仁王とは縁を切った身。
そして仁王本人も来るなと言った。
ならば別に元舎弟の所まで行かなくても何も問題はない。

『ビビったぁ?ククククッ仁王クンもこんな最低な奴とつるんだのが運のつきだったなぁ。
おい守本、こいつを助けてほしかったらなぁ。あの公園まで来い。そうしたら―――――。』

「は?俺、行かねぇぜ?
言っとくけどよぉ、俺と仁王、全く関係ねぇから。縁切ったし、なに?俺の個人情報の知ったかですかぁ?ご苦労様ー、残念ながら違ぇから。」

『ハァ?お前友達見捨てんの?どんだけクズな野郎なんだ?』

「友達じゃねぇっつってんだろ?
…それに一人の奴を寄ってたかって陰険に虐めた弱虫には言われたくねぇなぁ。虫。」

『…ああ!分かった、テメェまた人殺してぇんだな!!』

「なっ、ハ?」

『そうかそうか、だったら納得だ。喧嘩に関して察しのいいテメェなら予想ついてんだろ。
テメェに恨み持ってるやつがここに集まってるって、今テメェの周り超平和だろ?当たり前だよなー。だってここに集まってんだからさぁ。
あぁ、そーかそーか。人殺しの味しめたのか。お前がここに来なかったら仁王クン多分死ぬぜ?助けたかったら来るんだな。幼馴染兼友達を殺した守本友哉クン?じゃーなー、待ってっから。』

ブチリと言って切れた電話。
向こうから聞こえてくるものは人の声ではなく電子音。
一瞬何を言われたのか分からなかった。

記憶の奥底に隠したはずのヒトゴロシの記憶。


俺は、殺してなんか、殺してなんか、殺してなんか、ない!!
守れなかったのは事実だけど、違う!!知らなかったんだから!!知らなかったんだから、アイツが俺には内緒にしてて、だけど知らなかったって言うのはただの言い訳で、本当なら気付くことが出来たはずだから、
でも隠されたらさぁ、拒否されたらさぁ!俺は、助けてやろうとした。いや、助けたかった!それだけの力を持っていたのに、タスケラレナカッタ……?タスケレナイ、スクエナイ、コロシテシマウノハ オレ?



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